DO YOU SPEAK ATLAS?|第11話

さて、数日が過ぎ去り、由起夫君は再びマンツーマンレッスンを受けた。片手には洋菓子が握られていた。彼は先日思いついたプレゼント攻撃を、実行に移そうとしているらしい。

彼がラーニングスタジオに入ると、ステファニーが二人の生徒と話をしていた。絶好のチャンスである。

「あら、ユキオ。久しぶり」

彼女が応えたので、由起夫君は笑ってみせた。

「何話してたの?」と由起夫君。

「今、リンボーについて話してたの」

リンボーとは、天国と地獄の中間を意味し、キリスト以前の善人の魂がさまよっているいる所を指すらしい。レッスンが終わり、彼女が退出しようとした時に、彼はプレゼントを持ち出した。

「今日はこれを持ってきたんだ」と由起夫君。

「あら、ありがとう」彼女は喜んだ。

「どうして私に?」

どうしてと問われて由起夫君は困窮した。まさかストレートに好きだからとも言えない。

「君にあげたかったんだ」

彼は単純に応えた。彼女は再び感謝して、席を立った。

しばらくして、どやどやと10名ぐらいの生徒が入ってきた。さすがに夕方6時である。

「さっき、ステファニーが何か貰っていたみたいだけどあれ何なのかな」

エドが開口一番、そのことを口にした。由起夫君はプレゼントだと応えようとしたが、それを遮って男性の生徒が応えた。

「ああ、あれはお中元というんだ」

「お中元?」

「そうお中元といって、この時期になるとみんな贈り物をするのが日本の習慣なんだ」

お中元にしては時期が早い。由起夫君はそれを否定しようとしたが、今の彼の英会話能力では彼らに太刀打ちできるはずがない。彼は黙った。

「そうか。それじゃ特に深い意味はないんだね」

「会社の上司にも送ったりするし、一種の儀式みたいなものだよ」

「分かった。お中元、ありがとうね、ユキオ」

由起夫君は肯いた。しかし由起夫君にも、彼らが何を目論んでいるのかはわかった。

その後ステファニーが入ってきて、由起夫君が持ってきた洋菓子を彼の前でおいしそうに食べてみせていた。デレックも入ってきた。彼らは由起夫君の誠意をくみ取って、友好の印に何やらたくさんの事柄を話しているのだが、悲しいかな、由起夫君には半分しか理解できない。でもAtlasに通って2カ月半。そうとうリスニングも上達したのである。

ロビーでの会話も終わり、みんな教室を後にした。由起夫君は一人残り、次のように思った。

「どんなつらい思いをしても、ここに来続けよう」

これが彼の決意であった。しかし、その決意が現れるのは、まだ先のことである。


All content © Copyright 2019 by Atlasマンツーマン英会話 スクール小説 Do you speak ATLAS?.

Powered by Atlasマンツーマン英会話