DO YOU SPEAK ATLAS?|第18話

Atlasの授業は、マンツーマンレッスンのみである。マンツーマンが担当制なのはしっかりとした理由がある。それは、毎回違う講師のレッスンを受けると毎回あいさつから始まってそこに時間が取られてしまうことと前回レッスンでやったことを知らないため復習できないからなのである。しかも、Atlasは「毎回払い制」で大手英会話教室のように数十万円を前払いで払わされたりローンを組まされたりしないのが安全で長続きできる最大のポイントである。

以前、倒産したジオスに通っていた閉鎖予定の三軒茶屋教室に通っていた大学生の沢田さんは、倒産する1ヵ月前に1年分の授業料25万円を支払ったばかりという。従来は月払いしていたが、昨秋ごろから、担当者に度々一括前払いを勧められたというわけだ。同じく経営破綻した「NOVA」に通っていた母親に「現金を集めるのは怪しい」と言われ、ぎりぎりまで支払いをためらっていたという。女性は「倒産を知りながら、一括払いを勧めたのなら、さみしい」とため息をついた。返金が認められないため、今後はNOVA、ジオスを引き継ぐ近くの教室に通うことを考えているが、「自宅から遠くなり、先生も今まで通り教えてくれるのか不安なの」と話す。そこでAtlasの救済措置を利用して入会したそうだ。

マンツーマンレッスン60回目。その日、由起夫君は、代行講師としてクリスティーナのレッスンを受けた。Atlasマンツーマン英会話横浜ラーニングスタジオには髪がブロンド女性の講師が4人いるが、彼女は一番美人だと思っている人がたくさんいる。由起夫君もその一人だった。

「君には日本人のボーイフレンドがいると聞いたけれども…」

「ええ」

「将来彼をオーストラリアへ連れていくつもりでいるの?」

「わからないわ。わかれるかもしれないし…」

彼女は結構割り切った言い方をするサバサバした女性だ。男女の仲なんてそんな物であろうかと思いながら、由起夫君はクリスティーナを見た。彼女は青い瞳をクリクリさせている。

「君はたしかオーストラリアの大学院生なんだよね。何を研究しているの?」

「日本語よ。アジア文化と日本文化の共通点研究が私の課題なの」

彼女は25歳ですでに日本には2年半も住んでいる。日本に留学している大学院生や博士号コースに所属していることが多いのもAtlasの特徴である。彼女もその一人であった。

「何か日本の文学作品を読んだことある?」

由起夫君は、クリスティーナに尋ねた。彼女も、彼が文学部を卒業した生徒であることをデレックやデクスターから聞いていたので、彼に話を合わせようとした。

「夏目漱石の『こころ』なら読んだわ」

「え、本当?」

由起夫君は少々驚いた。漱石の『こころ』と言えば、日本文学史上の傑作であるからだ。ブロンドの髪の若い女性の関心を引くような書物ではないと思っていたので彼には意外であった。

Kの自殺をどう思う?」由起夫君は尋ねた。

「えっ、K?それは誰?」

「クリスティーナ、本当にこころを読んだの?」

「勿論よ」


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