DO YOU SPEAK ATLAS?|第26話

それから数日後、彼は仕事中、一人で次のようなことを考えていた。

「クリスティーナは美人だが、礼奈さんも彼女に勝るとも劣らない。いっそ二人共彼女にしてしまいたいところだが、中々そうもいくまい。もちろん彼女たちにも選択権はある。それはそうだが、もし自分が選択を迫られたらとしたら、どちらを選ぶべきであろうか。うーむ、どちらに転んでも損はないな。だが選択を迫られて優柔不断でいるのもいかがなものか。やはりここはひとつ、男らしく決断しなければならない。だが彼女たちは本当に僕に気があるのであろうか。それは無論だ。それは彼女たちの態度を見ていればわかる。しかし国際結婚などして、果たして上手にやっていけるのであろうか。確かに不安は残るな。だが日本人女性と結婚してしまっては、普段英語を使わない分、語学の習得が遅れてしまうかもしれない。うーむ、困ったな」

職場でこのようなことを考える男が、果たして男らしいといえるだろうか。それは皆さんの判断にお任せすることにしたいが、それにしても、由起夫君が考えているほど、思うようにことが進むものかどうか、実に疑問である。

数日後、由起夫君はレッスンブースにいた。礼奈さんの姿を他のレッスンブースに見かけたが、結局のところ、彼は彼女に挨拶することをやめたようである。彼女の物言いたげな視線が彼に突き刺さったが、彼は耐えなければならなかった。このときは63回目のマンツーマンレッスンで、講師はもちろん担当講師のデレックである。

「ユキオはどうやらもう問題なさそうだね」

彼はそう言って、由起夫君にレベル4のテキストを渡した。彼は雀躍としている。

テキストを受け取った生徒は、レベルアップのコンピューターテストを受ける権利が与えられる。このテストで今までやってきた集大成をみせることができるのだが、このテストはカウンセラーブースで受けるのが通例になっていた。

一週間後、彼はレッスン後にテストを受けるためにカウンセラーブースに入った。ここには普段生徒が入ってこないので、雰囲気がレッスンブースより少し重い。彼は日本人カウンセラーの近藤さんの姿を見かけた。

「こんにちは」と由起夫君。

「こんにちは」と近藤さん。彼女はとても笑顔が素敵な女性である。そこへクリスティーナが入ってきた。

「あれ、ユキオもコンピューターテストを受けるのね?」

クリスティーナはそう言った。彼女はいつも元気である。由起夫君はうなずいた。

レッスンが終わったのか、生徒と講師がレッスンブースから出て来た。由起夫君は一人でパソコンに向かってテストをしている。前回より難しくなった分、少し時間がかかっているようだ。ちょうどテストが終わりそうな時、クリスティーナが横をデレックと追いかけっこしながら走っていったのである。由起夫君は驚いた。これは明らかに、彼に対するクリスティーナの復習である。そこへカウンセラーの近藤さんが入ってきた。

「無視してください。何かわからないところはありませんでしたか?」

事情を察した近藤さんが、由起夫君に話しかけてきた。テストを終えた由起夫君は、

「ありがとうございました」

そう言ってレッスンブースを退出した。そこには明らかに怒気が含まれており、それに対して応える近藤さんではなかったようです。


All content © Copyright 2018 by Atlasマンツーマン英会話 スクール小説 Do you speak ATLAS?.

Powered by Atlasマンツーマン英会話