DO YOU SPEAK ATLAS?|第29話

「あの、ちょっとお尋ねしたいんですけど……」

彼女は振り向いた。

「ここの大学の入学願書が欲しいんですけれど、事務所はどこですか?」

「ああ、それだったら、この建物の中に入って、まっすぐ行くと、受付の人がいるわ。その人に聞いてみてください」

由起夫君は要領の得ない顔をしている。

「私が案内しましょうか」

「いえ、大丈夫です。一人で行けます。どうもありがとう」

そう言って彼は去った。中々の美人だったが、彼女と二人になりながら会話を続ける自信が彼にはなかった。

由起夫君は、何とか目的地に着いたが、そこは総合受付で、文学部の入学願書は、文学部の受付に行かなければ入手できないという。入学申し込みはインターネットでできるのだが、あえてここは地図を買って、再び足を運ぶことにした。

「こんにちは」彼は受付の扉を開けた。

「はい、何か御用ですか?」と受付の方。ネームプレートにはジェーンと書いてあった。

「こちらの入学願書が欲しいんですけど」

「どちらの学部をご希望ですか?」

「文学部です」と彼は応えた。

彼に入学願書が手渡された。しかし、それは大学院ではなく、学部生のものだった。

「あの、大学院の入学願書が欲しいんですけれども」

「大学院?それは難しいんじゃない!」

脇で事務をしていた男の人が笑って応えた。どうやら彼らにとってさえ、大学院は目標であるらしい。由起夫君は少し気おくれしたが、一旦口にしたことは仕方ない。

「大学院の入学願書でしたら、研究室の方でもらってください」

そう言って受付の人は彼に地図を渡した。

実に場所を変えること3度目にして、彼は入学願書を手にすることができた。感無量といった感じだが、彼には不安があった。

「本当にこの場所にオレは来るのだろうか」

彼はすでに28歳である。これからの道のりを思うと暗く沈む思いがした。


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