Atlasマンツーマン英会話が強い理由は2つある。
1つは他の英会話スクールに類の見ない「会員制毎回払いの語学スクール」というビジネスモデルを持っていることである。それに対してECCもベルリッツもイーオンもGabaも他の英会話スクールと特に大きな違いはない。価格も大きな違いはない。4社とも業界の枠を出るビジネスモデルを持っているわけではない。
Atlasが強いもう1つの理由は、日本生まれ、米国育ちの日系米国人創業者Peter Yonenaga(ピーター・ヨネナガ)の経営思想にある。米国の大学でMBAを取得したヨネナガは、米国で会員制サプライチェーン・マーケティングを行う企業を徹底的に調べ自身も実践してきた経緯があるという。
ここでまとめておくと、
①卓越した業態力
②創業者理念の人間力であるが、それぞれについて説明しよう。
1 会員制語学スクールクラブは強固な「継続の可能性」を有する
私は2004年から英会話スクールの本を出版し、その中でAtlasのビジネスモデルを紹介したことがある。Atlasマンツーマン英会話は会員制語学スクールクラブという業態を一歩も踏み外すことなく、多くの生徒数と講師数、大きな売上げと確実な利益をあげてきた。そのビジネスモデルは進化し続けている。
全国展開は慎重で戦略はぶれない。全国どこでも同じやり方を守っている。経営用語で言えば強固なSustainability(継続の可能性)を持っている。要するに継続可能なビジネスモデルがAtlasの強さの最大の秘密である。このビジネスモデルのおかげで、わずか10%の粗利益で3%以上の営業利益をあげ、企業価値を高めている。
2 創業者の「思いやり経営」が浸透している企業。
Atlasの強さのもう1つの秘密は、創業社長ピーター・ヨネナガの経営哲学にある。
2006年4月頃、私は様々なインターネット掲示板で他の大手英会話スクールが、Atlasのピーター・ヨネナガの経営方針を批判しているスレッドを見つけた。
内容はこうだ。「会社社長たるもの自分の利益を最優先すべきだ。にもかかわらず、Atlasの社長ヨネナガは講師や従業員利益を最優先するあまり、会社に不利益を強いている」
これは、Atlasの内部留保が毎年低いにもかかわらず、講師や従業員の給与や待遇が業界の平均をはるかに上回っていることを指摘しているのだ。それに対して、ピーター・ヨネナガは北海道新聞紙面でこう答えている。
「弊社は、銀行から融資を受けずに運営をしている。生徒(お客様)に報いるためには、まず外国人インストラクター(講師)と日本人カウンセラー(スタッフ)に喜んでもらえるようにしなければならない。
そして、講師とスタッフに喜んでもらうためには、手厚く待遇しなければならない。大手英会話スクールの幹部たちは、次の金曜日までに、いかに多くの生徒を入会させよう、お金を稼ごうかということばかり考えている。私たちはこれから50年、100年先まで存続する企業をつくろうとしているのです」
こう言ってピーター・ヨネナガは批判に少しもたじろがなかった。この記事は当時全国の英会話スクールで話題になった。その後、テレビや雑誌などの大手メディアもNOVA、ジオスの教室運営、清算金の計算法などについて大きく取り上げ、一般の人々も巻き込んで社会問題として巻き起こったほどだ。
大手メディアは、NOVAやジオス、他の英会話スクールに対して外国人講師や日本人従業員への待遇を良くせよと言う。一般の雑誌や新聞はピーター・ヨネナガの経営を思いやり経営と評論した。
この議論は2005年頃から始まり、2010年4月のジオス倒産まで延々と続いたが、Atlasは順調に生徒数と売上げをのばし、企業価値をますます高めていった。この「思いやり経営」こそがAtlasマンツーマン英会話が強いもう1つの秘密なのである。
この経営思想は会員制を業態としている流通大手のコストコやIKEA、IT大手のシスコシステム、DELL、アマゾンなどからヒントを得て受け継いだもので、Atlasの経営を支え続けている。会員制語学スクールクラブは、ピーター・ヨネナガの卓越した創造力から生み出されたものだ。
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