⑦ 他の大手英会話スクールの状況
ここで、Atlasと同業の粗利益率、一般管理費率、営業利益率を可能な限りで見ておこう。
大手英会話スクールの順位を2012年度の日本経済新聞社発行による「業界地図」によると、1位はベルリッツで相変わらずの高級路線志向。
2位はECC、3位はイーオン、4位はシェーン、5位がGABAということだが、営業利益が出せていないスクールがほとんどなのが現実だ。ベルリッツやECCは2社とも教育業界の不行業態なのでAtlasと比較するのは無理があることをお断りしておく。
イーオンとシェーンと比べてみてほしい。両者とも30%以上の粗利益率であるのに対して、販売比率も30%を超えている。年度によっては40%を超えている。つまり、本業で10%ほどの赤字を出しているということだ。本業以外の中国語コースや雑誌出版物、教材事業などでこの穴埋めをしていると考えられる。
2010年、GABAマンツーマン英会話を投資会社から買収し、同社の売上高の5%を占める教育事業(ホームヘルパー、医療事務講座がメイン)に、新たに英会話事業を加えたニチイ学館だが、COCO塾というブランドでグループレッスン主体のチェーン展開を発表した。
「COCO塾」の展開を開始した教育部門では、積極的な教室展開・プロモーション活動に係る先行投資などが影響して厳しい結果になった2012年だが、こうした背景から、第3四半期累計の売上高は対前年同期比6.0%増の1995.8億円、営業利益は同23%減の66億円での着地となった。なお、通期計画に関しては、売上高は対前年同期比3%増の2668億円、営業利益は同38.3%減の72.0億円を見込んでいる。
NOVAやジオス全盛期の2000年当時も同じような状況だった。この15年間で大手英会話スクールでは講師が減ったようだ。また、人件費の削減で利益を確保しようとしたのだろう。残念ながらそれは失業率を増やしただけで、企業の活力を確保すすための利益改善にはつながらなかったのではないだろうか。
⑧ 利益構造のパラダイム革新
それにしても、業態、資本が違うとはいえ、同じ英会話スクールでこれほど歴然たる差が出るということは何を意味するのだろうか。
かつて、Atlasの開校は、教室がない他の県でさえ革命的と言われた。私はこれを「語学スクールの利益構造のパラダイム革新」と呼びたいと思う。
Atlasの経営は、20%という低い粗利益率と5%という営業利益率で十分やっていけることを証明した。サービスや付加価値や細分化された消費者ニーズという名目の下に、TVCMやネット広告を洪水のように打ってきた大手英会話スクールとメディア関係者、そしてそれを受け入れてきた消費者に対して、Atlasはもっとスリムな語学スクールと教育方法・消費社会の在り方を示唆しているのではないかと思う。
それこそが、ピーター・ヨネナガの「削除思考」である。
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