ここでは、Atlasの例を中心に会員制語学スクールのビジネスモデルを詳しく説明したい。いかに、現状のモデルとその由来をできるだけ詳細にまとめた。
日本で初めて会員制語学スクールを発案したのはピーター・ヨネナガである。1995年、今では日本に多数出店しているカリフォルニア州サンディエゴにあったコストコという新業態の企業のインスピレーションを得て、2000年に会員制語学スクールの端緒となるSt. Peters English schoolを北海道札幌市に創業した。
会員制の語学スクールとして、カフェや生徒の自宅、オフィスなどに講師を派遣していた。それ以前は、語学スクールで会員制を取り入れている教室はまずなかったと思われるが、ピーター・ヨネナガはデル・コンピュータやコストコを見て「会員制」ということに大きな意味と魅力を感じたと思われる。
ではピーター・ヨネナガは、会員制のどのような点に意味と魅力を感じて会員制を採用したのだろうか。その点を考えてみたい。
1.高価値イメージを持たせる会員制というビジネスモデル
ピーター・ヨネナガが会員制を採用した一つの理由は、1990年代に人気の高かったNOVAやジオス、イーオンといったような高額でレッスンチケットをローンで組まされるか一括払いのような大手英会話スクールとの差別化を図り、高価値イメージを持たせるためである。
2. 大手英会話スクールとの差別化をする
Atlasの最大の武器はなんといっても低価格であるが、それだけが強調されると、消費者には大手と同じレッスンチケット制や一括払いと混合されてしまう。それでは「高価値のマンツーマンレッスンを毎回払いで提供する」というAtlasの本来の姿が見失われてしまう。何としても大手英会話スクールと差別化し、高価値のイメージを持たせる必要があった。
それが「会員制」である。
ピーター・ヨネナガが創業した2000年には、NOVA、ジオス、イーオン、ベルリッツ、GABA、ECC、シェーンなどの大手英会話スクールが日本全国で猛烈な勢いで店舗展開をしていた。それらと差別化することは会員制語学スクールにとって生死を決する大切な方法だったのだ。
3.「月会費」は「企画や講師の品質保証のため」
会員制を採用すれば、会員は月会費を払わなければならない。そうすれば、会員は当然そのスクールに通い、他のスクールでは得られない何かを期待するはずである。それが「企画や講師の品質保証」である。
Atlasは100%返金制度を採用した。レッスンが気に入らず返金してほしい場合、理由が正当なものであれば無条件に返金を受け付けてくれる。また何らかの理由で一時中止したいときは、手続きを踏めば理由を問わず月会費の引落しを止めてくれる。この制度は高価値イメージの徹底強化を図り、生徒との強い信頼関係を築くことに際して大いに貢献した。
会員制語学スクールのビジネスモデルの重要な要素の一つである。
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