おそらくアメリカには、他のどこの国よりも多様なビジネス文化が存在していると考えられています。ですから一般的なビジネスのための準備だけでは、現地で困難な状況に追い込まれる可能性があります。
しかし、幅広く多様な文化の影響があるおかげで、自分達の価値と競合しない限り、アメリカ人は型破りな交渉スタイルや癖に関しては寛容なところがあります。
一方、アメリカ人の多くは自分達の国の文化や価値が他の国よりも優れている と思っている傾向があるので、時には他国から傲慢だと思われていること もあります。アメリカの人々はアメリカ流のやり方が道義的に正しい唯一の方法だと信じきっているせいか、唯一の超大国による共通の原則に従うべきだと要求するかもしれません。
ここではアメリカ人の信念をできるだけ説明するように試みますが、実際のビジネス業務に関しては一般的なガイドラインからは外れていくかもしれません。いずれにしても、アメリカでビジネスをする時は、常に予想外の事態が起こりうることを忘れないでください。
アメリカのビジネスパーソンで経験豊富な人は、他国の人と多少なりとも触れ合う経験があります。しかし、ほとんどのアメリカ人は短期の旅行以外で自国から出たことがありません。大企業の上級幹部の交渉者でさえ、外国での交渉に来た時に外国や外国文化をほとんど知らないということもあります。その上、自分達のやり方を通すことを主張する人も多くいます。
アメリカ人と交渉する前に、どんなことが彼らのビジネスのやり方に影響を与えているのかを分析するのは価値のあることだと思います。最も重要な要素は、アメリカでは歴史的に地域によってビジネス慣行にかなりの違いがあったことです。
アメリカ国内の違いとは、未だに小さな都市や農村部では特にはっきりしています。例えば、東海岸北部と西海岸ではビジネスでの競争と人々の積極性がその他の地方と比べてより強いように感じられます。
カリフォルニア州など西海岸に住む人々は、外国や違う文化の人々とビジネスをすることに対してオープンですが、東海岸北部の州に住む人々は、自分達の生活圏のことに焦点を当てているせいか少し閉鎖的に見えます。また、南部の州でのビジネスは、他の州と比べてゆっくりしたペースで進むことが特徴です。
率直さのレベルにもかなりの違いがあります。アメリカの労働人口がよく移動することが部分的に原因だと考えられますが、多くの大都市では地域による違いはあまりなく、ビジネスパーソンはこの地域の違いについては寛容な傾向があります。
アメリカの人口比率を見てみると、約65%が白人(WASP)で15%がヒスパニック系、13%が黒人(アフリカ系アメリカ人)、そして4%がアジア人という構成です。ビジネスのスタイルはこれらのグループによってかなり違いがありますが、各々のグループの中でも決して均一ではありません。
全人口の約10%が外国生まれで、事業のやり方にこれまでの自自身の経験を頻繁に持ち込んでいるのが特徴です。しかし、アメリカの最も優勢な文化が強い統合力を持ち、移民達にもすみやか に取り入れられ、アメリカナイズとして内面化される特徴があります。
基本的に、意図しない行動でも差別と見なされると非常に深刻な結果になりかねないのですべての人種を平等に扱うことが重要不可欠です。
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