本来は、無意識の差別に注意深く配慮して作られるのが検定教科書のはずです。しかし、意図的なのかそれとも無自覚になのか、グローバル教育といいながら、学校の英語は欧米中心だと感じることが多いです。
ネットで中学教科書のイラストのことが話題になっていました。東京書籍が発行する中学用英語教科書ニューホライズンの平成28年度版ですが、話題になっているエレン先生はアメリカのボストン出身です。絵の可愛さやスタイルは好みの問題ですからいいとして、その外見をよく見ると青い目に金髪です。
こうやってステレオタイプなイメージが刷り込まれていくのでしょう。他の登場人物を見ても、カナダ人はやはり金髪で若いオーストラリア人中学生も金髪です。日本人の優秀なお兄さんは、オーストラリアに留学中でお姉さんは、ロンドンで勤務しています。
そしてサッカーコーチはというと、これがなぜかヒゲのブラジル人男性なのです。使われている写真を見ると、こちらもなんとなく偏見を感じるものが多いです。オーストラリアの話には、青碧の海とコアラの写真。ボストンは、野球場に高層ビルやアイススケート場の写真があります。
カナダは、雄大なロッキー山脈の写真です。それに対して、インドのことは食事の話題で、若くはなさそうな女性の手が食べ物をつかもうとしている写真があります。中国は、なぜか中国料理店に行く設定で、伝統芸能の独特な衣装とお面を被った人物の写真です。ブラジルは、写真がなくて小さな家のイラストだけです。
中2、3年の内容を見ても、登場人物が旅行するのはイギリスです。ホームステイ先はアメリカです。やっとアフリカが登場したかと思うと、それは学校に行けず働く子どもたちの話なのです。なんというのかこの教科書は、世界の中心は欧米だと信じている人の妄想が、そのまま形になったかのようです。
国際語としての英語といっても、先生の意識はまだまだ欧米圏の方ばかりを見ているのでしょうか?
みなさんも機会があれば教科書を開いて、そのグローバル度を確かめてみてはいかがでしょう。この教科書のキャラクターについては何か問題が起きているのでしょう。インターネット上には、英語教材を出版している会社からのメッセージが転がっています。その内容を一部紹介します。
「生徒指導上支障が起こらないように服装や髪形等について事前に先生方からご指導いただくなどの注意を払っております。中学生の皆さんが,教科書の紙面の中で生き生きとしたキャラクターが活躍するのを見て、もっともっと英語を学びたいという気持ちになり、またグローバル社会に生きる日本人として、日本の伝統・文化を世界に発信し、異文化への理解を深めていただけることを願っております。」
「注意を払って」「異文化への理解を深めて」欲しいと作られたのが、ステレオタイプな教科書というわけなのでしょうか? |