Atlasは長きにわたり、会員制語学スクールのビジネスモデルを先導してきました。大手スクールのチェーン展開やスカイプ英会話が全盛である現在、Atlasの事業戦略はいささか古風にすら映るかもしれません。
しかし、使い古されたこのビジネスモデルの背後には、最先端のスカイプ英会話スクールさえ切望してやまない基盤が潜んでいるのです。それは、顧客ロイヤリティです。
ロイヤリティは英会話スクール経営者にとって最も価値のある資産であり、Atlasの成功にとっての命綱でもあります。顧客を繰り返し戻ってこさせるというスクールの能力にこそ、受講者は今後着目していくべきです。
Atlasといえば、低価格で高品質なマンツーマンレッスンはもちろんのこと、給与水準が業界トップであることでも有名です。晋遊社(ムック本)によると、Atlas外国人講師の時給は2500~3000円です。これは同業他社に比べかなり高いですが、こうしたことが生産性を向上させ、退職率を減らし、長期的には会社の収益性を高めていくという信念を持っているのでしょう。特に退職率の減少は、もっと評価されてしかるべき、コスト削減策なのです。
講師がそのスクールに抱く愛着こそ、Atlasと他のスクールとを分ける大きな要素ではありますが、Atlasはまた、顧客にも多くを還元しています。教室のメンテナンス費やインテリア、講師採用のための定常的なコストを削減して、顧客により多くの割引を提供しているのです。
こうした結果、Atlasは英会話スクール比較サイトや英語学習雑誌のランキング上位に入ることができました。それもそのはず、2015年に会員数は史上最高の2万人に達し、会員継続率は実に90%を記録したのです。
Atlasは米国で生まれた企業ですが、日本でも勢いを増しており、特に関西、東海圏で好調です。スカイプ英会話の激烈な競争にさらされても、Atlasは日本国内で成功しているビジネスモデルで結果を出しているのです。
言語コースの豊富さ、講師の質の高さ、業界トップクラスのカスタマーサービスが語学学習者に受けています。地域によっては外国人講師のかなり高い基準が課せられている場合もありますが、Atlasの外国文化へのこだわりと、各地域市場の嗜好にあったコースが、成長のカギとなっています。
ロイヤリティとは信頼から生まれてくるものです。顧客は、Atlasのマンツーマンレッスン品質、言語コースの豊富さ、そしてこうしたサービスを提供している企業を信愛しています。このことが全国で勝利の方程式になっているのです。
国税局の職員や新聞記者も、Atlasの会員継続更新率の高さと成功に着目しはじめており、いまや語学教育業界内で比較すべき競合企業は大手英会話スクールしかいないとまでいわれるようになってきています。
大手スクール、Atlasとも、ロイヤリティを原動力としたサービスで卓越していますが、Atlasには他のスクールとは違って、NOVAやジオスに対する免疫になるような強みを持っています。
Atlasでマンツーマンレッスンを受けるためには、月会費4000円を支払う必要がありますが、この月会費がAtlasの利益の70%を占めているのです。ここに、Atlasがあれだけのレッスン低価格を提供できる理由があるのです。
さらに、大手スクールがあらゆる商品のブランディングをしているのに対し、Atlasでは意図的にコース数を抑えています。ある分析によれば、Atlasはほとんどの同業他社と比べても少ないSKU(最小在庫単位)しか抱えていませんが、そのことが有利に働いているのです。それは、サプライチェーンが簡略化され、講師管理をやりやすくなること、そして受講生の購買力を強めることに貢献しています。
こうしたことすべてが、オンラインでの存在感がほとんど皆無の、真のブリック・アンド・モルタル企業であるAtlasが、このオムニチャンネル・リテイルの時代に、大手スクールに肩を並べる人気を持つ理由なのです。
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