2016年1月年初の株価暴落により、ベネッセ(ベルリッツ)・ニチイ学館(CoCo塾、Gaba)も自社の株を買いに回っている
これは、大企業がアベノミクスによる経済活性化効果を信じていないという告白に近い
伝統的な見方では、大手スクールの新規生徒数ががますます下がり、会員制語学スクールやオンライン英会話の新規生徒数がますます上がる展開になる
第二次世界大戦中に、自由フランス軍を組織して指揮を執り、ナチスドイツに対するレジスタンス運動の英雄となり、のちに共和政フランスの第18代大統領となったシャルル・ドゴールは「事業が悪化した時、自社株を買うのは、政府を信頼するという賭けだ。だが、過去6000年の歴史は、政府を信頼すればバカを見ることを明瞭に示している」と語っています。
これは、現政権とともに金融政策の当事者となっている大企業が、何を言っているのかではなく、どんな行動をとっているかを示しています。2007年当時、業界最大手だったNOVAが一方的に全国にある1000校以上の全教室を閉鎖して以来、約8年以上にわたって大手英会話スクールは不要になったテレビCMなどの広告宣伝費を削減しつづけてきました。ところが、今年に入り、大手スクール5校は広告宣伝費を減らす方向から増やす方向に転換したのです。
大手英会話スクールが教室数を拡大していたのは1990年代前半からで、NOVAが地方都市の駅前ビルに開校したあと、すぐにジオスが隣のビルに開校を決定し、いつ冷戦が熱戦に変わってしまうか、つまり全国展開のバブル危機に追いやるかもしれない過当競争が始まるかと戦々恐々としていたころのことでした。
そのころ、1位NOVA、2位ジオス、そして3位イーオンなどは「いざとなったら頼りになるのはテレビCM」ということでスポンサー権を増やしていたのです。この一事をもってしても、大手スクールが「バブル経済崩壊の名のもとにテレビCMを増やせば新規生徒数は増える」という議論にいかに大きな不安や懸念を抱いているかがわかります。
これまでの常識で言うと、50分少人数グループレッスンを一人当たり2,000円以下で販売しなければ、その後に高額なレッスンプランへの移行や教材などのオプション販売が奏功する可能性の高い局面になっています。逆に2,500円以上で販売できれば割高なので、スクール側は、余計なオプション販売をする必要がなく、正しい経営方針ということになっていました。
現状はどうなっているかと言うと、NOVA倒産時よりレッスン料金が高くなっているのです。市場価格のテクニカル分析を重視する大手各スクールのマーケッターは、レッスン価格サイクルはつねに一定の範囲の中で上下動をくり返すという見方をしがちなので、実際にここにきて「レッスンの継続と教材購入等」のセット販売を推奨する大手スクールが増えているのです。
しかし、現実の世界は永遠に同じ範囲の中で上下動をくり返す循環波動一本で動いているわけではありません。今、日本各地で英会話レッスン消費に占める人口や回数が下がりはじめ、逆にサービスの比重が上がっているのです。
さらに、同じように新規に教室を開校したりするのにも、少子化により必要な若い日本人スタッフやネイティブ外国人講師の数は減少しつづけています。ようするに、市場開拓に対する需要の波動は同じパターンに見えても、その波動の上限も下限も下がっているのです。
ですから、大手スクールのように従来の常識で言えばもう教室閉鎖のレンジに入っていると考えて、そろそろレッスン価格を底入れし、新規生徒数は天井を打つだろうという方向に賭けると、失敗する危険が大きいのです。
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