アメリカ映画芸術科学アカデミーという団体がありますが、その団体が2月26日にアカデミー賞の授与式に短編ドキュメンタリー映画賞に「白いヘルメット」選ばれました。この短編映画はシリアでIS(イスラム国)の宣伝部門として活動しているシリア市民防衛(白ヘル)のプロパガンダ映画です。
実は、IS武装集団の中心はサウジアラビアが送り込んだサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団で、ロシアのチェチェンや中国の新疆ウイグル自治区からも戦闘員として参加しています。ロシアのプーチン大統領によると、ロシアから4000名近く、旧ソ連圏諸国から約5000名が反シリア政府軍へ参加しているようです。
2009年、アメリカのオバマ前大統領へ平和賞を授与したノーベル賞でもそうでしたが、昔からアカデミー賞は支配層の意思、支配層が大多数の人々にどのような幻影を見せたいのかによって決まります。しかし、そうした実態はすでに多くの人に知られています。
マスメディアの報道も同じなのだが、すでに洗脳ではなく茶番になっています。今でも支配層が描く幻影を信じている人がいるとするならば、それは騙されているのではなく信じていたいだけなのでしょう。長い物には巻かれないと今後仕事が貰えないと考えているというわけです。
しかし、すでにアメリカは勝ち馬でなくなって来ています。1991年12月にソ連が消滅した直後、ネオコン(グr-バリスト)はアメリカを唯一の超大国になったと思い込み、国防総省のDPG草案という形で世界制覇戦略を作成しました。その前提はロシアと中国を属国にしたということですが、21世紀に入ってプーチン大統領がロシアを再独立化させ、前提を崩してしまったのです。本来ならこの段階でアメリカは、国防総省のDPG草案を放棄し、少なくとも大幅な手直しをする必要があったのですが、驕り高ぶったネオコンは現実をドクトリンに合わせようとしたのです。
歴史的に振り返ってみると、1971年8月にリチャード・ニクソン大統領がドルと金の交換を停止すると発表した段階でアメリカ経済は破綻していたことがわかります。それを誤魔化すため、米ドルが基軸通貨だという特権を利用し、金融操作で生きながらえようとして打ち出されたのがフリードマンの理論に基づく新自由主義です。
米ドルを発行することで必要な商品を外国から購入、流れ出た米ドルをOPEC諸国との取り決めなどで回収、固定化するペトロダラーの仕組みを作りました。その後、新自由主義の時代に金融は自由化され、大量の米ドルが投機市場へ吸収されて2000年や2007年の時のようにバブルになりました。これが現実世界で起こればハイパーインフレになるのです。
そして現在、この金融操作が限界に近づいています。ロシアを締め上げるつもりで始められたと言われる原油価格の暴落はアメリカの同盟国のサウジアラビアを財政赤字に陥らせ、アメリカ国内の高コストの石油産業はダメージを受けています。そして、同じ同盟国のイギリス経済も苦しくなっています。
ところが、締め上げる対象だったはずのロシアが受けたダメージは比較的小さく、中国との関係を強化し、両国は米ドル離れを進めています。これ以上同調する国が増えれば、米ドルは基軸通貨の地位から陥落することになりそうです。そうなればトランプ大統領誕生以前、アメリカ国内での生産能力を放棄する政策を推進してきたアメリカは存続できなくなるでしょう。
その前に軍事力でロシアや中国を制圧したいというところでしたが、それが困難だということをシリアでの戦乱は証明しました。通常兵器での戦争ではアメリカはロシアの技術力には決して勝てないのです。ネオコンはそれでも軍事力でロシアや中国を屈服させようとしてきましたが、必然的に全面核戦争の危険性を高めることになってしまいました。
そうした状況への懸念が昨年のアメリカ大統領選挙で戦争ビジネスやネオコンを後ろ盾とするヒラリー・クリントンを敗北させる一因になったように思うのです。マスメディアやハリウッド俳優の正体はすでにバレてしまっています。今後、アメリカが勝ち馬でないと多くの人が思い始めれば、一気にアメリカは崩落していくことになります。それだけに、アメリカの支配層やその傀儡たちは必死なのです。
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