最新の科学の研究では、プラス思考だと仕事も失敗し、給料も下がるという驚愕の研究結果が出ているようです。題して、「プラス思考でメンタルが悪化する!」と話題になったのが、2016年2月にアメリカのバージニア大学の研究者が出した論文がその証拠です。
これは67名の男女を対象にした実験で、全員に架空のビジネスプランを立ててもらった上で、それぞれのプラス思考レベルを採点したものです。その結果は、以下のとおりでした。
・「ビジネスが上手くいく!」というポジティブな想像をした参加者は、その直後には気分が良くなったが、1カ月後には逆にうつ状態が増加していた。
・普段からプラス思考な参加者ほど長期的にはうつ状態になる確率が高く、その効果は7ヵ月後にも確認された。
要するに、プラス思考というのは一時のやすらぎになるものの、長い目でみればメンタルに悪影響をもたらす可能性が高いということなのです。このような現象が起きるのは、未来に対してプラスなイメージを持ったせいで、逆に現在の自分のダメさが際立ってしまうからです。高いところから落ちたほうが、着地のダメージは大きくなるわけなのです。
続いておもしろいのが、2012年に出た論文です。こちらは83人の学生を対象にした実験で、全員が「いつもどれだけプラス思考を使っているか?」を調べたあと、2年後の状況と比較しました。その結果は、
・プラス思考な学生は出席率が低くて成績が悪かった。
・プラス思考を使う学生は卒業後の求人が少なく、就職しても年収も低かった。
研究者によれば、プラス思考な学生ほどモチベーションが低く、仕事ができない傾向が高かったようなのです。物事を前向きに考えるせいで、現実の問題が見えにくくなってしまうのも大きな原因です。最後に、2002年の研究も紹介しておきましょう。
こちらの実験では、恋愛中の学生103名プラス思考レベルを採点したうえで、5カ月後の経過をチェックする調査が行われました。その結果は、ポジティブな考え方の学生ほど恋に破れる確率が高く、逆にネガティブな学生ほど恋愛が成就していたのです。
以上の話をまとめると、プラス思考で人生がうまくいくどころか、逆に仕事もプライベートも失敗してしまうことになっていることがわかります。自己啓発書の教えとは逆の結論になっているのです。「プラス思考」研究の権威であるガブリエル・エッティンゲン博士は、20年におよぶリサーチの結果を、こうまとめています。
「どんな角度から調べても、古い心理学や自己啓発本の考え方は間違いだとわかった。プラス思考が役に立つ場面もあるが、単に物事をポジティブに考えるだけではダメなのだ。プラス思考は、あたかもすでに目標が達成されたかのような幻想を与える。その結果、目標に向かうための意欲が削がれてしまう」
基本的に、人の脳は現実とイメージを区別するのが上手くできないようにできています。そのため、プラスな考え方をすることで、脳がすでに目標をやり遂げたように思い込んでしまうことがよくあるようです。プラス思考とは、どうにもならない過酷な環境でのみに役立つことが研究からわかってきました。
すべてのプラス思考が無意味なわけではありませんが、エッティンゲン博士はこうも述べています。
「プラス思考は、状況によっては大いに役に立つ。体重を減らしたり、タバコを止めたり、新しい仕事を得るためには使えないが、圧政的な政治に耐えたり、砂漠のような環境で生きのびたり、冤罪で捕まったときなどには多いに使うべきだ」
つまり、プラス思考が効果を持つのは、自分の力ではコントロールが効かないような状況だけなのです。あくまでバンドエイドのような応急処置のために使うべきで、傷の根本的な治療には向いていないことがわかりました。それどころか、安易なプラス思考のせいで、多くの人は長期的な幸せを失っている可能性もあるのです。
結果的に、プラス思考は何の役にも立つ思考法ではなく、一時期気分が良くなってもその後、気分が悪い方向へ向かっていくことになります。唯一役に立つのは圧政に耐えたり、砂漠のような環境で生き残ったり、どうしようもない劣悪な環境に置かれた時だけなのです。自己啓発マーケットの安っぽい売り文句には、ダマされないようにしたいものです。
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