アメリカの債務上限の話は5月末でしたが、再度予算を上げ、デフォルト(国家債務不履行)延長を試みているようです。しかし、5月に入り、今度はアメリカではなく中国に異変が起きています。
中国の国債を「格下げ」 米ムーディーズ、債務負担急増で
米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは24日、中国の人民元建てと外貨建ての国債に対する格付けを「A1」に1段階引き下げたと発表した。
このニュースを受けて、ウォールストリートジャーナルなどは日本のバブル崩壊時に似ているという報道がありました。
中国の格下げ、日本のバブル崩壊を想起 似通う経済状況
日経平均にあたる上海総合指数ですが、4月に入りかなり下がっています。中国は2月の時点で外貨準備高が急減していました。中国経済は無数の爆弾を抱えていて、リーマン・ショックを越えるバブル崩壊が射程に入ってきているようです。
異様な住宅投資や不動産バブルの破裂、地方政府の債務不履行、企業倒産が続き、鉄鋼や石炭、レアアースなどの企業城下町では数万人規模の暴動が起きています。軍人の大幅削減が発表されて以来、旧軍人の抗議デモが北京のど真ん中で起きています。
野放図な鉄鋼、アルミ、セメント、建材、板ガラスなどの過剰生産と在庫は経営を圧迫していますが、国有企業の効率的な再編は遅れているようです。債務不履行を避け、不動産バブルの炸裂を回避するために、過去2年間、中国当局が採用してきた政策は、西側資本主義では考えられない無謀さでした。
例えば、株式市場への介入など「株を売るな」「空売りをしたら手入れをする」がありました。その上で、巨額資金を証券会社に入れて株価維持政策(PKO)を展開しました。現在も株は人為的な操作で維持されています。外貨準備を減らさないためにも、資本規制という禁じ手を用いる一方で、外貨交換は年間5万ドル(約560万円)以内に制限しています。
また、500万ドル(約5億6000万円)以上の海外送金を許可制として事実上禁止し、海外旅行に出ようと銀行に両替に行くと、「ドルはありません」と言われるのです。そして、日本企業も中国からの利益送金が来なくなって悲鳴を挙げています。
一方、当局に寄せられた新規マンション建設の申請は、合計34億人分と発表されました。中国の人口は約14億人ですから、20億人分の空部屋をつくるという計画です。住宅への異常な投資が過去の中国GDP(国内総生産)を成長させてきましたが、昨年の経済工作会議で習近平国家主席が、住宅とは人間が住むもの」と注意しました。
究極的に中国の債務は約30兆ドル(約3300兆円)とされ、銀行の不良債権問題が浮上しています。人民元の大下落は時間の問題でしょう。要するに、「上に政策あれば、下に対策あり」というのが中国人の特性を考えると、庶民が何をしているかをみれば次が読めます。
人民元暴落を見越して、昨年までは海外の不動産を続け、外貨が規制されると人民元で購入できる高級車ブランドのレクサスやメルセデスベンツ、スイスの高級腕時計ロレックス、仮想通貨のビットコインや金地金買いに走っています。
中国では何かと規制が厳しくなっています。銀聯カードによる日本円引出しがそれなりの金額では全くできなくなりました。インバウンドをあてにしていた旅行客も来なくなりました。
中国国内では仮想通貨取引をする際にカメラで自分自身を撮影したものを中国当局に提出しなければならなくなりました。送金自身は親族を通じた地下銀行を用いれば良いので、後は規制が比較的緩い国にいる一族に稼がせ、送金させているようです。
さらに、共産党中央の高官約80%は、すでに資金を海外に避難させているようです。李源潮氏(現国家副主席)が行った調査で、「第17代の党中央委員、候補委員と中央紀律委員会委員の85%以上が、その親族と子女が海外で不動産を購入しており、いつでも自らの役職を放棄し逃亡できるように備えていることが判明した」と述べています。
この状況に危機感を覚えた習近平氏は16年6月に開催されたある会議で「われわれは党が崩壊し国が壊滅するという状況までほとんど来てしまっている」と発言しています。
香港誌「動向」は12年に、情報筋の話として、中国当局内部権威機構が行った調査では中央委員の9割の親族と子女がすでに海外に移民していると伝え、中国当局が公表している『「裸官」監督管理調査研究報告』によると、39%の公職者が、その配偶者が外国の国籍または永住権を有すると』認めています。
最後にウィキリークスによると、スイス銀行にある中国腐敗官僚の個人口座数は5000件以上で、その3分の2は副首相から中央委員まで党中央レベルの高官だといいます。昨年4月、国際調査報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)が公表したパナマ文書でも、少なくとも9名の現役または前中国共産党最高指導者の親族が海外に資産を隠していることが暴露されています。
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