メルセデス・ベンツ日本は、親会社のドイツ自動車大手ダイムラーが欧州で実施するディーゼル車300万台以上の無償修理について、ついに日本でも同様に対応すると発表しました。日本は対象外との方針を公表していましたが、その後、ダイムラーからの指示を受け、一転して無償修理の実施を決めたようです。
ご存知の通り、日本経済は1980年代に突入して絶好調でした。そして、それに関連した主力産業である電子部品や機械部品などあらゆる産業の総体として、自動車産業が大きな位置を占め、その真ん中にトヨタ自動車がいたのです。
民生品に関しては、1980年代には日本の製造業は世界一の技術水準とマーケティング力を持っていたことが分かっていましたが、現座でもそれは工業製品の品質にダイレクトに表現されています。その象徴として初代トヨタ・セルシオという高級車があったのを覚えているでしょうか。
世間的には、あまり話題にならない話かもしれませんが、この初代セルシオは世界の自動車産業に強烈な衝撃を与えたと思うのです。私が聞いた話では、一番影響があったのが当時の西ドイツに本社があったメルセデス・ベンツ、BMW、そしてアウディには相当衝撃を与えました。
世界の定番的高級車として、絶対的信頼のブランドというのは、メルセデス・ベンツのSクラスですが、1989年に初代トヨタセルシオ(北米名:レクサスLS)が登場して、メルセデス・ベンツの技術陣はさっそく市場で購入した上で、解体して徹底解剖しました。
そこで得た結論として、メルセデス・ベンツでは、この価格で、この水準の自動車は製造不能ということだったのです。つまり、現状このまま推移すれば、高級車市場はやがてトヨタ(レクサス)にすべて独占されると予想したわけです。現状では、メルセデス・ベンツはいくら努力しても、トヨタに勝るSクラスは作ることはできていません。
これを機会に、あれだけ頑固な製造法を採用していたメルセデス・ベンツが大規模な自己改革をせざるを得なくなっています。世界の高級車市場というのは、メルセデス・ベンツを中心に回っているという自負がありました。その絶対的自負心が、初代セルシオの登場で脆くも大崩壊していたのです。
ヨーロッパの自動車産業は、トヨタ自動車を前にしてすべてが劣勢となっています。コスト面、性能面、耐久性などすべての面でトヨタに勝てていません。つまり、自動車というのは、産業の総体で構成されるため、あらゆる民生品の性能に優れる日本の産業力にドイツ勢は全く勝てないのです。
実際に、同じクラスの車を比較して、ベンツとトヨタを比較しようにも比較にならないのです。なぜなら、性能に差がありすぎるからです。ここで欧米諸国は日本を駆逐するため、マスメディアを用いてプロパガンダを主張しだしました。それが、地球温暖化のために二酸化炭素削減をするとした環境保護でした。
自動車はガソリンを燃やし、二酸化炭素を増やすので地球環境に悪いと、強大化する日本経済を牽制するために、環境問題という政治課題を押し付けました。これにトヨタ自動車はハイブリッドエンジンで対応し、車の製造はあらゆる特許で構成されていますが、これでハイブリッドエンジンはトヨタが権利をすべて押さえてきたのです。
一方、これに対抗するドイツ勢は逆にこれを上回る技術が育たないため、ハイブリッドエンジンに対しディーゼルエンジンで対応しようとしました。ところが、実際には環境に優しいディーゼルエンジンは作れませんでした。なぜなら、排ガス規制に対応しようとすると出力が出ないからです。
すると、排ガス規制もクリアし、強大な出力を発生させるハイブリッドエンジンと同等な比較にはならないわけです。これで窮余の策で考えたのがインチキな燃費検査だったのです。検査時だけ相反する排ガスと出力を誤魔化しクリアしようとしました。
真面目なドイツ人らしくないこのインチキなやり方は、まずVW、そしてアウディ、さらにメルセデス・ベンツにまで及びました。ここまでメルセデス・ベンツはトヨタに追い込まれたということです。ベンツは完全に白旗をあげたことによって、欧州自動車産業は全面的に敗北したわけです。
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