1989年にベルリンの壁が崩れ、冷戦が終わると状況は一変し、アメリカは日本を庇護の対象ではなく、対等な競争相手と見なし、日本の総合電機力の源だった談合構造を切り崩しにかかりました。それが日本貿易摩擦であり、日米構造協議でした。
この日米構造協議の過程で始まったのが通信自由化と電力自由化なのですが、これにより日本の電機産業は弱体化しました。例えば、通信では新規参入した新電電グループとの価格競争が本格化したため、NTTの設備投資は2005年には2兆円にまでしました。
電力の設備投資もピークの5兆円から2兆円を割り込むまで落ち込み、こうなると電機業界は、NTTや東京電力に代わる新しい収益源を探して右往左往していた各社に追い打ちをかけるように、2008年にリーマン・ショックが起きました。それにより、液晶テレビやデジタルカメラが売れなくなりました。
そして2011年3月11日に東日本大震災が起こり、東京電力は巨額の損害賠償金を背負い、国有化によってなんとか生き長らえています。家長を失った電力各社は、電電ファミリーと同様に崩壊を始め、東芝は粉飾に手を染め始めました。
日本経済が減退した大きな理由は、アメリカによる日本の強力な企業連合の取り崩しです。今日までアメリカは、日本経済をターゲットとしてありとあらゆる工作を行ってきました。電電と電力という、戦後の日本の電機産業を支えてきた2つのピラミッドが崩壊したことが、電機全滅の最大の原因だというわけです。
例えば、金融自由化を名目として金融機関を倒産させ、電電公社を民営化し、通信の自由化を強制し、ソフトバンクを創業させることで通信市場寡占を破壊させ、電力会社を中心とする東京電力と東芝のエネルギーインフラシステムを破壊させました。
何でもありで有名なアメリカの諜報機関の工作によるものだからこそ、極めて危険なものになっています。日本の金融や通信、エネルギー、家電を破壊した今、次のターゲットは、自動車産業ということになりそうです。つまり、次のターゲットはトヨタ自動車というわけです。
さて、イギリス政府は、2040年からガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を発表しました。大気汚染対策の一環で、電気自動車(EV)への完全移行を目指すと現地有力紙などが報道しました。フランス政府も先に、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売終了を目指す方針を発表しています。
イギリス紙のタイムズによると、イギリス政府はモーターとガソリンあるいはディーゼルエンジンを組み合わせたハイブリッド車(HV)の販売も2040年までに終了する方針を伝えています。
というわけで、イギリスもアメリカと同様、国家をあげてトヨタ自動車包囲網を行うということを公式に発表したことになります。電気自動車の構造的欠点は、バッテリーの容量の問題です。バッテリーは今のところ、パナソニックを中心に日本企業の独壇場になっていますが、リチウムでも蓄えられる電力量に限りがあります。
その限界値の低いバッテリーに充電する時間も必要なため、一度充電しても、せいぜい150㎞くらいまでしか走れません。充電箇所も各所必要になり、デメリットが大きいので、用途としては近所に買い物に行く程度で、業務用では利用できないと思います。
また、環境面としては良いイメージがありますが、実際のエネルギー効率はガソリン車に比較して遥かに劣っています。発電所の火力で作った電力を送電線を通じて全国に配電すること自体、ロスが膨大で全くエコとは言えません。
要するに、これは政治的な問題であって、電気自動車というはバッテリーと車体とタイヤだけの簡単な構造で出来ているので、イギリスのような最先端技術の全くない技術途上国でも作れる可能性があるわけです。つまり、イギリス車やアメリカ車の復活も可能性としては出てきます。
最近の欧州諸国の自動車産業のニュースというのは、そういうイメージ先行の話だと思うのですが、しかし世界の市場は全く受け入れず大失敗するでしょう。
|