投資というのは、株を売買して利益を上げるより、S&P50ETFに投資して配当を再投資した方がよっぽど高いリターンが期待できるようになっています。なぜなら、市場が「効率的市場仮説」のもとであらゆる情報を瞬時に織り込み、正しい資産価格を反映するため、投資家が市場を出し抜くことはできないからです。
この「効率的市場仮説」は1960年代にシカゴ大学のユージン・ファーマ教授が発表しましたが、この「効率的市場仮説」に批判的だったのが著名投資家ウォーレン・バフェット氏でした。バフェット氏は「仮に市場が効率的であるならば、私は今頃物乞いをしている」と語ったことがありました。
先日、「経済学」と「心理学」を融合し、「行動経済学」として独自の学問を発展させたリチャード・セイラー氏がノーベル経済学賞を受賞しましたが、彼もバフェット氏と同様に「効率的市場仮説」については否定的で、特にアノマリーについて、「仮に市場が効率的であるならば、なぜ株は1月に好調なのか?」と問いかけました。
投資家は例年、税金対策のために12月末にかけて含み損を確定させるため売りが集中します。一方、1月は売られすぎた銘柄が買い戻されるので、1月は相場が堅調に推移しやすい傾向があります。
また、セイラー教授は「人間は予想外の出来事に過剰反応する傾向にある」と指摘しています。たとえ老後資金のために運用している長期投資家であったとしても、目先の株価だけに集中し過ぎるあまり、予想外のネガティブサプライズで株を投げ売りする傾向があるというわけです。
そのため、セイラー教授はパニック的な売りが株価を押し下げる一方、それが株の上昇余地を生み、さらに株のパフォーマンスは時間が経つにつれ米国債を上回ると主張しています。
さて、セイラー教授の行動経済学に従えば、「人間は本当に変わらない」ということが分かります。世界の株式市場は今、北朝鮮を巡る地政学的リスクの高まりやトランプ政権による大規模な税制改革の行方など先行き不透明感が高まっています。
また、歴史を振り返れば、株式市場は10年に一度のペースで大暴落を繰り返しているので、リーマンショックという金融危機から丸9年経つ今、先行き見通しに警戒感も高まっているようです。しかし、セイラー教授の「人間は予想外の出来事に過剰反応する傾向にある」という指摘が正しければ、ネガティブサプライズによるパニック的な売りは資産価格を売られ過ぎなまでに引き下げ、賢明な投資家たちに絶好の機会を与えることになります。
ただし、突然の大暴落で市場参加者たちがパニックになっている中、あなただけが冷静でいられる保証はありません。誰もが目先の株価や悲観的なニュースを目の当たりにしている中で、おそらくセイラー教授の言葉など思い出すことはないでしょう。
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