私は約26年前、韓国の大学に留学したことがありました。そこで多くの友人ができましたが、中でもすぐに意気投合した韓国人の親友がいました。これまで韓国に出張した時には必ず会って話をしました。逆に、彼が日本に来た時も会っていました。
当時、まだ独身だった同い年の彼は顔が俳優のチョ・インソンに似ていて、身長が190cm近くあり、その直後に流行り始めた韓流スターを先取りしているような人でした。江南などソウル市内の繁華街で私たちは様々な話をしたことを今でも鮮明に覚えています。
そしていつしか私は韓国に行くことが減り、彼も商社マンとして10年を経た頃にはソウルを離れ、香港やシンガポールと転勤していました。それでも私たちの友情は途切れることはなかったのですが、先月会った時に彼に戦争のことと天皇陛下についてどのように考えているか聞いてみました。
彼は英語はもちろん日本語も話せるのですが、そこでは静かにこう答えてくれました。
「正直言うと、韓国人からすると日本人が羨ましいと思う。なぜなら、今の韓国には王様がいないからね。100年以上前には朝鮮王朝があったけれど、戦後に王政復興しようという国民の声はなく、結局このまま大統領制が続いているよね。今からちょうど30年前に韓国は民主化宣言したけれど、民主主義国家であることは誇りに思うよ。でもやっぱり世界的にみると王様の存在は大きいよね。」
そして、今年2017年9月、彼は久しぶりに仕事で日本に来ていて、日韓のビジネスマンや記者たちが集まる会合で私も一緒に参加することになりました。その会合とは、日本側からは韓国人ビジネスマンに質問し、韓国側も日本人ビジネスマンに質問するといったものでした。
ちょうどアメリカと北朝鮮を巡る軍事的な緊張が頂点に達しかけ、Jアラートが日本中に鳴り響き、第二次朝鮮戦争開戦になりかけた時期でしたが、不思議と韓国人ビジネスマンたちの表情に緊張感は見られませんでした。そこで私の順番が回ってきたので、私はこう尋ねました。
「韓国の皆さんは朝鮮戦争がまだ起こるとは思っていないですか?戦争が起こったとしても1日足らずで北朝鮮は崩壊すると思いますが、その結果として南北統一国家はどのようなものになると思われますか?」
しかし、彼ら韓国人ビジネスマンたちは思考停止したように、戦争が起こるとは考えたこともないような口調で答えていました。何か固定観念にような思考が感じられ、これ以上そのような話はしてほしくないというような感じを受けたのです。
韓国に精通している在日韓国人の友人に聞いてみたところ、韓国人エリートであればあるほど親米的な傾向があり、北朝鮮と戦争をするなら、アメリカは韓国に事前通告してくるはず、と信じて疑わないビジネスマンが多いと言うのです。その会合の場合が正にそのような状態で彼らは全員、思考停止していたわけです。
大変興味深かったのが、韓国人の友人たちは祖国が世界でも屈指の民主主義国であることを誇りに持ちつつも、実はそれによって決まる政治家とは別に、グローバル社会で欧州の王族や日本の皇族など国体勢力が存在していることを意識していないことでした。
例えば、欧州の王族や日本の皇族も赤十字などのネットワークで繋がっています。そしてそこでお互いに意思疎通ができなければ国家としてダメージを受けることがあります。それが韓国の政治的・経済的な大混乱でもあるというわけです。
私は韓国のビジネスマンたちを見て思ったことは、王族を失った朝鮮民族の悲しみが今も続いているということでした。競争が厳しいグローバルマクロの世界では、ひと時も油断は許されていません。私たち日本人は今、正にそう改めて陛下や皇室に感謝をすべきではないでしょうか。
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