サウジアラビア政変の背後には、テクノロジーの世界的な拠点となるための戦いという意味合いが見て取れますが、実はこれだけではなく、さらに驚くような理由があります。それは、トランプ政権がイスラエルの首都をエルサレムに容認する声明との関係で浮かび上がってきます。
12月6日、トランプ大統領はアメリカの歴代大統領ではじめてイスラエルの首都はエルサレムだと正式に宣言しました。そして現在はテルアビブにあるアメリカ駐イスラエル大使館をエルサレムに移動すると発表しました。
エルサレムには、イスラム教とユダヤ教の共通の聖地である神殿の丘があり、イスラエルとパレスチナの両方がエルサレムは自分たちの首都だと考えています。1947年にイスラエルは建国されましたが、その直後に国連はエルサレムを西側をイスラエル、東側をパレスチナの首都として二分割することを決議しました。
ところが、イスラエルは1967年の六日間戦争で東エルサレムを占領し、1993年のオスロ合意でパレスチナ国家の創設を了承したものの、現在は政権の座にあるリークド党のもとでオスロ合意を拒否しています。このような状況のため、これまでイスラエル以外の世界のすべての国が、エルサレムをイスラエルの首都と認めず、大使館をテルアビブに置いてきました。
いずれにしても、トランプ政権は世界ではじめてエルサレムをイスラエルの首都と認めました。ところで、イスラム教でもっとも原理主義的で、アルカイダのような多くのスンニ派原理主義的組織を生んだサウジアラビアは、イスラエルとは友好的な関係ではありません。
アメリカの顔を立てて、これまでは表立って対立するわけではないものの相互に無視する非友好的な関係を維持しています。そのイスラエルとの非友好的な関係を主導し、イスラム原理主義組織を支援してきたのは、今回の政変で逮捕された11人の王子でした。
サルマン皇太子が主導したサウジ政変では、こうした敵対勢力が一掃されたわけですが、サウジアラビア王室はアメリカのディープ・ステートを支えるクリントンやブッシュなども権力の座から同時に追われ、一掃されたことになります。この敵対勢力はイスラエルとの非友好的な関係も主導していました。
こうした政変の結果、サルマン皇太子が率いるサウジアラビアとイスラエルは、共通の敵であるイランに対抗するために、急速に接近していると報道されています。イスラエル軍の指導者がサウジの通信社の会見に応じたこと自体これまで考えられなかったことで、サルマン皇太子によるイスラエルへの急接近の意向があると見て間違いないでしょう。
さて、12月6日に行われたトランプ大統領によるエルサレムの首都容認の意味と目的がはっきりと見えてきました。日本のマスメディアでは、トランプ政権が国際情勢にあまりに無知であるのが原因だと報道していますが、いつものようにフェイクニュースを流しているだけです。この声明はよく考えられた政策として実行されていることがわかるからです。
その目的は、サウジアラビアとイスラエルの同盟を主軸に、拡大するイランを徹底的に押さえ込むことにありそうです。現在、シリア内戦に勝利したイランと武装民兵組織ヒズボラは、シリア国内に軍事基地を建設し、シリアをイランの影響下に置いています。このまま進めば、イランは中東の地域覇権国となるはずです。
これを阻止するために、サウジアラビアは政変でイスラエルと非友好的な勢力を一掃し、イスラエルとの関係を強める選択をしたいわけです。それにはイランとの戦争さえも覚悟している可能性があります。
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