昨年末頃から日本企業が中国市場へ積極的に進出しようとする動きがあるようです。その象徴的な出来事が昨年末の二階自民党幹事長による中国訪問でした。二階幹事長は習近平国家主席に訪日も要請したようです。
また、安倍首相が中国の推し進める一帯一路政策に協力していく方針について改めて述べたとも伝えられています。そして、日本の銀行や証券会社でも中国市場への積極的姿勢がうかがえます。
そのきっかけとなったのが、昨年11月に中国当局が発表した規制緩和です。中国当局は、国内の金融市場で外資規制を緩和し、証券分野では2020年に、生命保険分野は2022年にそれぞれ外資が100%出資する現地法人の設置を認めると発表しました。
日本のメガバンクであるみずほ銀行は、中国の中央銀行「中国人民銀行」から日本企業としては初めて人民元建債券の発行に対する認可を得たと発表しています。また、証券分野では野村證券が緩和を受け、中国国内の富裕層向けビジネスを開始すると発表しました。
しかし、これまで日本企業が海外へ進出した歴史を考えると、いつも欧米企業の尻拭いをされられてきたことから、今回も騙されるのではないかという不安を感じるわけです。特に、中国、そして金融と言った時に真っ先に浮かぶのが不良債権問題です。
日本も1990年代前半にバブル崩壊から散々な目にあった不良債権ですが、こうした不良債権問題に度々警鐘を鳴らしているのが国際的な金融当局である国際通貨基金(IMF)です。IMFは、昨年8月にも中国の総債務残高の上昇ペースに対し警告してきました。
当然、中国当局もこうした問題に目を背けることはなく、習近平政権はその就任以来、問題の大きい国営企業に対する大改革を断行してきました。ゾンビ企業と呼ばれる、債務過多で経営上大きな問題があるにもかかわらず存続している企業に対する改革を行ってきたわけです。
そんな中、IMFは昨年11月に公表したレポートでこうしたゾンビ企業の債務残高は、中国全体の債務残高の僅か10%と報告しました。この報告書を受け、欧米諸国のマスメディアは積極的にこの問題を報道し、中国の債務問題は明らかに解決しておらず、むしろ悪化の一途を辿っているとしています。
こうした中で、中国当局による外資規制緩和について一つ考えられるのは、外資を債券市場に誘導し、こうした多重債務を中国国外へ誘導しようとするものがあります。しかし、中国はこうした措置を今まで何度も行ってきました。
しかも、今回の緩和措置の目玉は外資の資本参画の上限が緩和されたことです。いよいよ資本への外資注入を容認したという意味で最終手段に出たとも考えられるわけです。つまり、中国の金融市場は新たな局面に入ったということになります。
まず、外資を債券市場に誘導し、こうした多重債務を中国国外へ誘導しようとする手法は、今や誰もが知っていることであり、何らかの利益がない限りみすみす欧米の金融機関が資金注入をするわけがありません。
そうなると、欧米の金融機関が見い出そうとしている利益とは、CDS(デリバティブ)を通じた一時的な利益や中国がデフォルト(国家債務不履行)する前に企業のLBOといったものが考えられます。また、中国市場で大きな利益が見込めず、欧米の金融資本が警戒し、積極的な投資を行わない可能性もあるわけです。そうなった時に中国がターゲットにするのが日本ということになります。
日本の金融機関、特に地方銀行を中心とした銀行は貸出金利の低減などを受け積極的に海外市場に進出しなければならない中、中国に進出するという選択もあるはずです。そのような中、日本の金融機関がどのような思惑を胸に中国へ進出しようと考えているのでしょうか。
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