今回のメインテーマは、連動しているように見える北朝鮮とイラン情勢についてです。
北朝鮮情勢の緊張緩和が続いていますが、4月27日に板門店(パンムンジョム)で開催された南北首脳会談以降、5月末にも開催される予定の米朝首脳会談に向けて、北朝鮮の完全な非核化と朝鮮戦争終結、そして北朝鮮の国際社会への復帰も予感させる流れになっています。
すでに金正恩委員長は首脳会談で、「アメリカと正式に終戦すれば核兵器は不要になる」と述べたことが報道されていますが、アメリカと平和条約を締結し、朝鮮戦争を正式に終結させることが全面的な非核化の条件になると見られているわけです。
この発言を受けて、4月28日にアメリカのマティス国防長官は、北朝鮮と朝鮮半島からの米軍の撤退について議論する用意があると述べました。北朝鮮は在韓米軍の撤退は求めないとしていたので、マティス国防長官のこの発言は日本や韓国のような同盟国の同意が前提になりますが、アメリカは北朝鮮に大きく譲歩する可能性があることを示しているようにも見えます。
ただ、韓国の文在寅大統領は在韓米軍の撤退は北朝鮮との協議の対象にはなっていないと述べているように、北朝鮮との平和条約の締結後も在韓米軍の駐留は継続するとしています。また、北朝鮮が非核化を示したことを受け、アメリカのジョン・ボルトン大統領補佐官が「リビア方式でしかありえない」と発言したと報道されています。
ジョン・ボルトン大統領補佐官は、時間をかけて非核化の検証をすることはアメリカは認めないと述べていることから、トランプ大統領のイラン核合意破棄を示唆によって、金正恩体制は相当プレッシャーに感じていると考えられるということです。
このような中、5月末にも開催が予定されている米朝首脳会談では、北朝鮮の全面的な非核化に向けての具体的な動きと朝鮮戦争終結に向けての発表がサプライズ的に行われる可能性も否定できない状況になっています。
一方、北朝鮮とはまったく異なり、これから大きな戦争の開始を予感させる状況になっているのが、中東のイランです。
イスラエル軍、シリアにある複数の軍関連施設を4月に入り何度もミサイルで攻撃しています。在イギリスのシリア人権監視団によると、攻撃で少なくとも26人が死亡し、大半はイラン人と見られているようです。
攻撃の標的は民兵の司令部施設ですが、イランのメディアは自国民の死亡情報を否定しています。イランはイスラエルのこのような攻撃に対し、報復を誓っているため、いつイスラエルとイランとの間で戦闘が始まってもおかしくない緊張した状況が続いているわけです。
こうした戦争への流れに歯止めをかける動きも見られています。イスラエルの攻撃に対し報復を誓っているイランですが、今のところは自制しているために動きがありません。イスラエルの攻撃がイランを挑発するものであり、これに反応して報復してしまうと、これを口実にイスラエルは大規模なイラン攻撃に踏み切る可能性が高いので、イランは徹底して自制しています。
しかし、国際的に様々な歯止めの動きが見られるものの、すでにイスラエル軍はシリアのイラン関連の基地への大規模な攻撃に動いている可能性があります。すでにイスラエルは40以上の標的の選定を終了しており、いつシリアでイスラエルとイランの戦争の火蓋が切られてもおかしくない状況になっています。
このように見ると、イランを巡る情勢は急速な緊張緩和が進む北朝鮮の情勢とは正反対に動いていることが分かります。北朝鮮情勢の緊張緩和が進むとイランの情勢が急激に緊張し、反対に北朝鮮情勢の緊張はイラン情勢の緊張緩和と繋がっているように、両国はシーソーでも見ているかのように連動しているということです。
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