2020年度から実施される次期学習指導要領で小学校の英語が拡充されることに備え、2018年度からの2年間は移行期間として、英語教育拡充を希望する自治体や学校では先行実施することが可能になりました。
これにより、全国の学校が一律で英語の授業数を増やしていくわけではありませんが、明確に準備期間に入ったと考えるべきです。では、実際に英語の教育改革が始まると、どのような変化があるかを見ていきたいと思います。
現在、小学5年生・6年生の外国語活動として年間35単位時間が充てられていますが、2020年度からは、小学3年生・4年生で年間35単位時間、5年生・6年生で年間70単位時間の外国語活動実施が予定されています。
時間数以上にあるのは外国語活動中に扱う語数の設定で、これまでは語数の規定はありませんでしたが、2020年度からは小学校の間に600~700語程度を扱うことが決められました。現在の中学英語での語彙数が1,200語程度であることを考えると、かなり多めの語彙に触れることになります。
以上のことを踏まえると、従来の英語教育と何が違うのかと感じるかもしれませんが、今回の2020年度からの英語教育改革が重視しているのは、語数を増やすこと以上に「聞く・話す力のレベルを高めること」らしいのです。
従来の日本の中学英語では長らく基礎文法を学び、高校では長文をずっと読まされてきました。しかし、結局日本人はまったく英語を話すことができていません。この状況を変えていくことを今回の教育改革は掲げているようです。
また、大学入学試験に、4技能測定可能な外部試験を導入することもすでに始まっています。しかし、今までの「読み」「書き」だけではなく、「聞く」「話す」を重視する英語教育へ転換することによって、今までのように、8年間も英語の授業を受けても英語を話せるようにならないという悲劇からの脱却は本当にできるのでしょうか?
2020年に開催予定の東京オリンピックには今よりもさらに世界中から様々な外国人が日本を訪れることになります。その時に、「英語がわかる人がいなくて苦労した」と思われることがどれほど情けないことかと政府も文科省も土壇場になって自覚し、今回の英語改革が決められたのでしょうか?
私は今まで自分の役割として、日本人の語学力を先進国としてある程度の水準にまでは引き上げたいと考えてきました。流暢である必要はありませんが、日常会話ができる程度の英語力は必要不可欠だと考えています。
今回の英語改革はお題目としては歓迎できる内容ではありますが、実際の運営については疑問符が残ります。それは何より、英語教育の現場を担う教員が圧倒的に不足している点とその英語力に疑問があるからです。今まで、受験英語のみを目指した英語教育を受けて教員になった方には荷が重すぎるわけです。
それでも、自治体や学校単位で外国人講師を迎えた勉強会を実施したり、個人的に英会話スクールに通って英語力を高める努力をしている方はいます。そういう努力を国や文科省が後押しする制度もまた整備されるべきです。
ともあれ、2018年4月から先行実施をする学校や自治体があることから、小学校の英語教育はすでにスタートを切ったと考えるべきです。そして、英語に苦手意識の高いご両親は、是非、この機会に英語学習を始めることをお勧めしたいと思います。
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