私は日本で生まれ、7歳まで日本で暮らしていました。それまでは割と普通の子どもとして生活を送っていました。しかし、ある事情でアメリカに移住し、ボーディングスクールで現地の教育を受けるようになり、その後、15歳の時に日本へ帰ると周りから異質だと思われ、挫折したことがあります。ところが何とか我慢し、18歳でアメリカに戻った時も自分は単なる日本人だということに気づいてしまい、合計3回も挫折したことがありました。
今振り返ってみると、私は一般的な日本人ではなく、英語圏のネイティブでもないことから、なんとなく20代前後の頃は外国人コンプレックスがあったのではないかと思うのです。しかし、外国人コンプレックスのことを詳しく調べているうちに、結局それはただの被害妄想だったことが理解できるようになりました。
海外旅行のような一時的な滞在では、日本人はあくまで外国人として滞在するため、自分が外国人であることに引け目を感じることはまずありません。それが長期滞在になると、現地で生まれ育った人とどうしても比較してしまうのです。例えば、アメリカ人ならわかる冗談も、理解できず置いてきぼりにされてしまうことが多々あります。
外国人コンプレックスとは、外国人と自分を比べ自分が劣っていると思うことです。私は日本では背が高い方ですが、アメリカではほぼ平均身長です。さらに、自分はアジア人であることからやはり外見的にはどうしようもないことだと感じたことがありました。
いくら英語が流暢に話せるとはいえ、アメリカで生まれ育ったアングロサクソン系の血筋の良い白人たちには逆立ちしても勝てません。それこそ20年以上の間、必死で英語を使ってようやく肩を並べるようになったような気はします。別に勝つ必要はなかったわけですが、テストの点数ではいくら勉強しても、全く勉強してないアメリカ人の同級生にすら勝てなかったこともありました。
これも完全に被害妄想なのですが、どうせ自分は日本人なんだと考えると、相手もとっつきづらくなるでしょう。自然と、アメリカ人と日本人という溝ができてしまいます。しかし、私は現地の大学に通っていた頃は、まったくそのように感じませんでした。
そして21歳の時に、一人で会社を立ち上げた際、取引先や顧客は自分の意見をはっきり言うために受身になってしまい、結局たいした友達もできませんでした。そうすると当然、生活は孤独になります。自分が受身だったのが原因なのですが、自分は日本人だから仕方がないと考えるようになりました。
私の身長は185センチ、体重は85キロくらいなので、日本では大男の部類に入ります。しかし、白人社会にいると日本人である私の一挙一動がユニークだと認識されていたように感じました。別に悪い気はしませんでしたが、何か下に見られているような気がして、構えるようになってしまいました。これも被害妄想なわけです。
実際、アジア人と仕事をしたくない空気を出す人もいましたが、そういう人間は日本にもいます。自分がアジア人であるという負い目があったため、強く言い返すことも出来ずに塞ぎこんでいたこともありました。現地の人だけに伝わるジョークもわからないことでコミュニティーにも上手く入れない時期がありました。
結果的に、相手に聞けなかった自分が悪いのですが、それにはもっと勇気が必要だったと思います。結果、引きこもりになり、仕事以外は人と話さない時期が数ヵ月続きました。
そんなコンプレックスを抱えていた20代前後の私でしたが、23歳頃には克服することができました。これ以上無理して白人層に馴染むことをやめ、現地に住む多くの移民とも仲良くするようにしました。言い方は悪いかもしれませんが、やはり私はアジア人であり、日本人なのです。
アメリカの文化や考え方やライフスタイルは受け入れ、アメリカ人になるように努力していましたが、白人層と同じように考え、行動する必要などないと考えました。もちろん、悪意を持っている人種差別者には断固反発しました。明らかに差別されている日本人を見ると、謝りすぎだから謝らないようにとアドバイスしたことも何度もありました。
しかし、日本人留学生の場合、基本的には長年住んだ日本文化が体に染み付いてるため、数年しか住んでいないアメリカに完全に適応することはできません。自分は日本人だ、と塞ぎこんでいる人がいたら、自分は日本人だ、と胸を張れるようになれば良いのです。落ち込んだところで現地の人になれるわけではなく、自分に自信を持って、堂々としてれば良いのです。
|