英語圏以外の国で、例えばヨーロッパならば大抵の国で英語は通じる時代になりつつあります。実際に、そう思っている日本人も多く、結局、日本と比較すれば英語が通じる国は私たちが思っているよりも多いようです。
だから、「現地の言葉が話せなくても英語が話せれば問題なく生活できる」という話をよく耳にするというわけです。しかし、そこには少し誤解があるように思います。なぜなら、英語が通じる国のほとんどが英語以外の言語で成立している国であるということです。
少なくても、イギリス以外のヨーロッパ諸国でも英語が通じるというイメージを私たち日本人は持っているものと考えられます。英語能力指数でみると、フランスやドイツ、スイス、北欧などでは常に世界ランキングの上位に位置していることからも、相対的にヨーロッパ人の英語力は高いと言えます。
ところが、私の意見としては、英語は通じますが英語だけで普通に生活できる場所は一部だけということです。そもそも英語を話せるといっても、それなりに教養がある40代以下のヨーロッパ人が中心であって、50代以上になるとカタコトくらいのレベルの方が多くいます。
当然、多くの日本人とは異なり、ヨーロッパ人の多くは英語でのコミュニケーションに対してひるむことがありません。ただ、文法や言い回しが間違っていても堂々と力技で伝えてくる方は大勢います。
要するに、旅行やビジネスで世界のどこに行くとしても「英語が話せれば問題ない」という意見を鵜呑みにしてはいけないということを私なりに伝えていきたいと思っているということです。
そもそもヨーロッパではフランスではフランス語が公用語で、ドイツではドイツ語が公用語です。スペインや南米のほとんどがスペイン語を公用語としており、ロシアはロシア語、イタリアはイタリア語だけが公用語になっています。
これはアジアでも同じで、韓国や中国、東南アジアの一部の国を除いて、そこに住んでいる多くの人々の日常生活では英語など全く必要ではありません。例えば、賃貸契約書や銀行の手続きの書類など、すべて現地の言葉で書かれています。外国人相手でも基本的には現地の言葉で話しかけてくるのが普通です。
昔、私がスペインに滞在していた時、スペイン語を話せない現地在住のフランス人やドイツ人とは英語で話したことがよくありました。韓国や中国本土に滞在していた時も、できるだけ私なりに精一杯の現地語で話すようにしていました。
ちなみに、ヨーロッパにある市町村レベルの自治体のいくつかは、「英語はお断り」の看板を掲げているようです。しかも、外国人を受け付ける役所の窓口であっても英語で一切対応しないようです。つまり、公用語がある以上、英語で対応するかどうかはその方のさじ加減になるということです。
いずれにしても、現地で英語対応をしてくれるのは相手の好意によるものであって、私たち日本人がそれについてクレームを付けることはお門違いということになります。ましてや、渡航前にそう思い込んでいるのも見込み違いと言えます。
逆の立場で考えてみるとわかりやすいかもしれません。日本に来た外国人が、銀行の窓口で英語で対応するようにクレームを付けたとしても、多くの日本人は「ここは日本だから日本語で…」と思っているというわけです。
このように考えてみると、「英語が話せれば問題ない」という考え方自体、相手に対して母国語以外でのコミュニケーションを強制することでもあるということになります。それは相手の理解があってこそ成り立つことだけに、英語で返してくれる方というのは付き合える人はルールに合わせてくれているだけとも言えそうです。
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