日本人の持つイメージとして、「アメリカ人は働かない」「ドイツ人は効率的」というものがあります。私は、ここ数年でアメリカ西海岸と東海岸に行ってしっかりと観察してきたわけです。さらに、ドイツにも行ってきました。
長い間、日本人が持つステレオタイプな印象に疑問を持っていたわけですが、実際のところ、欧米人のほとんどがだらだら働いているというのが事実です。ドイツ人にしても日本のテレビが言うような効率的に働いてるようには全く見えません。
しかし、効率的に働いているように見えることに理由があるとすれば、それは、苦労をすることが嫌いだから、ではないでしょうか?
これに対して、日本の40代以上はまだ苦労を美化する傾向があります。「若い頃は苦労したことで今がある」「若いうちから甘えるな」など、つらいことがあればあるほど人間的に成長するという価値観を感じるわけです。
要するに、「苦労することがお前のためになる」ということです。さらに厄介なことに、バブル世代の50代を飛び越え、60代以上になると「苦労をいとわないことが誠意や愛情」という考えもあります。一部の60代以上には、ワードで作った履歴書やスマホでメモすることさえ、誠意がないと考えているほどです。
このような状況の中、より苦労が美化されることになれば、さらに手間が増えることは誰の目にも明らかです。60代以上にとって、苦労することが重要であって、スマートな効率化など考えることはなく、酷い時にはそれが批判の対象にすらなるということです。
私自身、40代中盤ということもあり、ある程度はそういう価値観の中で生きてきた人間ですから、今の20代・30代の日本人の多くが欧米人と同じくらい苦労したことがないことに驚いています。とにかく、多くが苦労したがりません。
たまに様子を見に行くアメリカやヨーロッパで感じたことは、日本の若者と同様、苦労したがらないことです。これは明らかにグローバルで進行していることであります。
さらに、会話をしている時も要点をまとめた欧米人のような日本の若者も、40代以上と比較して多い気がします。電話で問い合わせた時、要件よりもまず状況説明をするわけです。日本ではまだここまでではありませんが、アメリカやヨーロッパでは用件について聞かれるのが普通です。
要するに、余計な苦労をしたくないことから直接的にわかりやすく言ってほしいというわけです。実際、要件だけを言うようになってからは手続きや問い合わせが格段にスムーズになりつつあります。
一方、自分に関係のないことに関してはシャットダウンをしたがる傾向があります。休みたければ休み、余計な手間をかけない分、余分な責任は背負うとはしません。これはある意味自己中心で怠慢ですが、地球寒冷化の時代にはそれによって効率的に働けたり、休める環境につながっているのかもしれません。
そう考えると、欧米社会では納得いかないと抗議したり、直訴することが多いというのもわかります。のもうなずけます。つまり、合理的な理由がなければ面倒なことはやりたくないということです。当然、効率化すればいいというわけではなく、避けられる苦労まで背負い込んでしまうことになると、むしろ効率が悪くなるものです。
自己中心に思われてしまうことも、「私には関係ない」と言い切れてしまうのが欧米社会なのですが、日本ではまだまだそうはいかないのが現実です。ただ、それが日本的な義理人情であることからも、一概に日本が世界に対して遅れているというわけでもありません。
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