外国に住んだことがあると言うと必ず聞かれることが、治安についてです。このことを聞かれるたびに私は迷ってしまうわけです。なぜなら、何を基準に治安の良し悪しを判断するべきか分からないからです。
私自身、一部の地域や時間帯を除けばアメリカの治安は良いと考えています。しかし、単純に日本と比較することはできません。
大前提として、日本の治安は間違いなく世界一であると思われます。とにかく財布を盗まれることはありません。驚くことに、財布を落としたとしても、次の日に近くの交番に行くと届いていることがあります。
カフェや飲食店では、トイレに行くためにパソコンやスマートフォンを置いていく方もいるほどです。外国から日本に帰国するたびに感じることは、無防備な上にほぼ盗難に遭わないことが不思議でなりません。
それと比較するとアメリカの治安は明らかに悪いと言えそうです。少し目を離した瞬間にカバンやスマートフォンを盗まれることは、日常茶飯事の出来事です。当然、財布をどこかに落としたら二度と戻ってくることなどまずありません。
通常、日本では夜0時前後の女性一人歩きにあまり不安はありませんが、アメリカでは都市部であっても田舎であっても、何らかの恐怖を感じずにはいられないでしょう。誰かと一緒に電車や車で帰宅するか、誰かに迎えに来てもらう必要があります。
同じように、ヨーロッパや中国、韓国など日本以外の国では女性が深夜に一人歩きすることはありえないことです。何かあってからでは遅く、どうしても一人で歩きたいのであれば格闘技の練習が必要です。
欧米諸国では、セルフ・ディフェンスは当然のこととされており、常に「もしも」のことを考えながら生活しているのが現状です。そういう意味では、日本以外の外国の治安は悪いと言えるかもしれません。それでも私はアメリカの治安はまだ良い方であると考えています。
私自身、そもそも比較対象の基準が日本ではないこともありますが、世界には歩いているだけでも命の危機を感じる地域があります。南米のある地域では強盗はこっそり盗むことはなく、殺してから盗みます。
タクシーなども外国人と見るとボッタクリが普通に横行し、流しのタクシーなどはもはや論外の国もあります。世界には、日常的に暴力的事件が転がっている国や地域がまだあるということです。そういう地域を基準にすれば、アメリカの治安は良いと言えます。
特に、欧米諸国の治安基準というのは、生命の危機を感じずに日常生活を送れることができたり、基本的に大事件に巻き込まれないという認識であって、夜道を一人で歩いても問題ないわけではありません。
現地に住むアメリカ人や日本人に聞いてみても決してアメリカの治安は悪い、とは言いません。同時に、私もアメリカの治安は悪いとは考えてはいません。しかし、それは犯罪が起こらないという意味ではなく、気をつけていれば基本的に犯罪に巻き込まれずに暮らせる、という意味です。
ただ、アメリカの治安については日本と同じ治安レベルで考えてしまう方もいます。観光地で見かける日本人観光客を見ていると、危険な行動をしている方々が目に入ってくることがあります。例えば、注意すべきことは財布に大金を入れるべきではないというようなイメージがあります。
ところが、日本人が考える想定外のことや警戒すべきことも多くあるわけです。日本では老若男女全ての方が寝ていますが、外国の電車内で寝ることはご法度です。なぜなら、財布やスマホを盗まれる可能性がとても高いからです。
また、写真を撮ってもらうためにスマホを他者に渡すこともすべきではないことです。なぜなら、その場で持ち逃げされるかもしれないからです(だからこそ、「セルフィー」という文化も生まれました)。このあたりの行動は警戒する必要があります。アメリカでは、スーツケースから体を離しただけでも誰かが警察に通報し、電車が急停止することさえあります。
日本では落し物と認識されたとしても、アメリカでは持ち主不明の不審物と見られることがあります。日本で生活している感覚でそれに触るものなら、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるほどです。
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