1990年以降に生まれた現在20代、30代についてですが、これまで様々な局面でいわゆる「ゆとり世代」と呼ばれてきました。
実際に、ゆとり世代の世間でのイメージというのは、今でもかなりネガティブではあるわけです。単に授業数を減らすという方針を当時の政府が決めただけで、その政府が実験の結果、「失敗した…」とわかったことから、終了したということです。
一方、最近では「団塊世代」がネガティブ・ワードとして認識されつつありますが、私のような40代は「団塊世代は考え方が古い…」と言うことはありません。要するに、「ゆとり教育が失敗したから、ゆとり世代が悪い」というわけではないということです。
ゆとり世代が新社会人になって、「ゆとり教育を受けた若者が理解できない」「ゆとりは考えてることがわからない」のような話がよく出てきていますが、そもそもそのゆとり世代の子どもを育てたのは40代~60代であるわけです。
学校の教育だけでは、それほどの影響があるはずがなく、性格さえも変えてしまうような政策ではないのは明らかです。結局、人格が左右されるのは家庭であり、躾(しつけ)を行うのは学校ではなく、家庭であるということになります。
一般的に、ゆとり世代は「職場での付き合いが悪い」「打たれ弱い」などと言われていますが、それは躾の話であって、一昔前のような体罰はなくなりましたが、学校の教育とはあまり関連がないように思います。
つまり、ゆとり教育を受けたから付き合いが悪いのではなく、年功序列などの習慣が完全に崩壊したことで、社会全体が転職前提の入社となり、上司の愚痴を聞く必要がなくなった、という考え方に変わったということです。
その証拠に、酒の付き合いが悪いのは、ゆとり教育でそうなったわけではないのは誰もが知っているはずで、ただ、団塊世代の人たちがこれまで築いてきた習慣が合わなくなっただけのことです。これは世代(時代)の違いでしかなく、教育の違いではありません。
ほとんどの会社の上司が上手くスマホを使えないのは、時代が変わったことでこれまでのITテクノロジーが大きく変化したからなのですが、あと10年もすれば今の40代も社会的に使い物にならなくなるかもしれません。
時代は確実に変わっていくわけですから、若者の考えも変わるのが当然の話ということです。繰り返しますが、それは時代のせいであって、教育のせいではないということです。
次に、ゆとり学習によって授業数が学習量が削減される教育方針が実施されたということで、各先進国の調査で日本は国際学力テストで順位を落としたことなどから学力低下が指摘されたことがありました。
その後、各方面から様々な批判が殺到したわけですが、国際学力テストで順位を落としたから「頭が悪い」わけではないということです。他国やある地域がその時に実力を高めただけの可能性もあり、日本だけが平均点を下げられてスコアを出した可能性もあります。
例えば、マクドナルドのある店舗の売上が例年に比べて低下したのは、例年に比べて平均気温が日が1度低かったから、という新聞記事が報じられたとします。つまり、売上が落ちたのは平均気温が低かったからであるということです。
しかし、この分析は必ずしも正しいとは言えません。なぜなら、雨や雪の日が増えた可能性があり、近くにモスバーガーの新店がオープンしたかもしれません。スターバックスがリニューアルしたからもしれないわけです。
つまり、「売上が落ちた」ことと「平均気温が下がった」ことが同時に起きていたからといって、そこに因果関係があるとは限らないということです。
それでも頑固に「因果関係がある」と言いたいのなら、他の地域の業績や過去に平均気温が下がった時の売上額など、そうやって比較して分析しなければ結論は出せないはずです。同じように、学力低下は本当にゆとり教育のせいなのかどうかを自分自身で考えるべきです。
どこの学校でも、平均学力が高い学年や低い学年があるものです。このように、ゆとり教育と学力低下の関係は理論的に基づいたものではないことは明らかです。そもそも、個人のどのように伸ばしたかったのかを先生や生徒には全く伝わっていなかったように思います。
結局、「ゆとり」という考え方が失敗したのではなく、それを指導する政府や文科省の能力が足りなく、学校が対応できてなかったから失敗したということが言えそうです。それを実行する担当者の能力や環境がなかったということもあります。
最後に、40代中盤の私もその一人ですが、ゆとり世代はバブルを経験したことがない世代で、年功序列はもちろん、終身雇用など夢のまた夢と考えています。時代の変化によって人も変化しているということです。その結果が、ゆとり世代ということではないでしょうか?
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