カリスマ教師の授業というものは、実際にはどんなことをやっているのでしょう。大手予備校の長文読解の講座を受けた生徒の話です。
「講座でやるのは、いわゆる難関大学の長文問題だから、読みごたえはある。辞書を使って、全訳も参考にすれば、読める。問題も間違えるけど、正解と全訳を参考にすれば自分なりに納得できる。だけど、先生の解説がまったく理解できない。」
「何がどうわからないのかとテキストを見てみると、赤字でびっしりと先生の解説が書き込んでありました。that → 接続詞ではなく関係代名詞、it → 仮目的語、後述のthat節を受けている。強調構文と似ているが構造が違う。」
「…ing of A → Aが直前の動名詞の意味上の主語となっている。第5文型の補語・目的語や、to 不定詞の前に置く for 名詞(行為者)、また、分詞構文の意味上の主語と語順が違うので注意してる。」
この講座の案内には、「難関大学に合格するためには、長文を論理的に読む力がもっとも大事。細かい文法事項をばらばらに学習しても合格はできない。本講座では読み応えのある長文の良問を厳選し、真の読解力向上を目指す。」とあるのです。
しかし、実際は読解力どころか、暗号解読の公式ばかり説明している講座のようです。彼はこの講座を受けたことですっかり自信を喪失してしまい、いくら文章が読めるようになっても合格できないと思い込んでしまったようです。
時間をかけて彼の勘違いを解きましたが、それでも不安はぬぐえないかもしれません。夫婦共働きでどうにかこうにか教育費を捻出し、子どもを予備校へ通わせる親ですが、自信を失い、劣等感の塊になっていく子どもたちを見ていることになっています。甘い汁を吸い続ける予備校のことを考えると、哀しすぎる現実があります。
現在、ネットや情報機器を活用した個別学習スタイルの学び方が急速に広がっています。生徒が個別にPCやスマホを使い動画を見て学習するものです。テレビCMも盛んにやっていますから、読者の方もご存知でしょう。
実は、進学校と言われている高校の中には、こういったものに生徒全員を入会させる学校もあります。各自で個別学習ができることはいいかもしれません。しかし、集団授業のほうも工夫するというわけではないようで、昔と変わらず生徒は講義タイプの授業を集団で受けるのです。いっそのこと集団授業の時間はなくして、個別学習だけにすれば良さそうなものですが、そうした動きにはなっていません。結局、企業は儲かる、学校は従来のまま、翻弄されるのは生徒だけということでしょう。 |