入試改革の話題がニュースになることが増えてきましたが、英語に関しては今あるシステムの延長線上で小手先の改革をしても、改善されることなど何もないでしょう。文科省が設置した「英語教育の在り方に関する有識者会議」の顔ぶれを見ても、かえって悪い方に向かいそうな気がします。
会議には、英語教育産業の代表格とも言えるカリスマ講師であるとか、 アカデミック以外の社会の動きには関心なさそうな言語の専門家、 TOEIC の点数を昇給や減給に使う会社のトップ、 そんな人たちが集まっているのです。
そんな場所で、本気で教育のことが議論されるとは考えられません。皆、既得権益を死守したい、またはそこに入り込みたい人たちばかりです。例えば、最近新しい英語テストが登場しましたが、そのテストを強力に推し進めているのも、この会議のメンバーです。
新しいテストができれば、試験作成の仕事、試験官や採点者、新しい教材、新設講座、受験料などなど、莫大な市場が生まれるわけで、会議の主導権を握って改革を進めれば、大儲けが期待できること間違いなしです。日本の若者や将来のことより、自分たちの利益・名声が優先されるのは明らかです。
「日本人が英語を使えるようになる」ためにまず必要なことは、もうはっきりしています。それは、「英語をスクリーニング・選別の道具にすることをやめること」 そして以下が、現役高校教師による具体的な提案です。
「英語を入試科目から外し、英検準2級(または同等の英語力)取得を出願の要件とする」
①高校での英語の授業は座学ではなく、「保健体育」「家庭」「情報」「芸術」のような「実技科目」として扱う。英語「で」他教科の内容を扱う等、英語を「道具」として扱う。
②英検準2級は、①の方針で授業展開をすれば、高校卒業段階までに十分習得できるレベルである。2級にすると、現在のように試験のための授業になる可能性がある。
③大学の研究活動に必要な英語力は、大学教養課程で身につけさせる。大学には英語教育の専門家がいるので、学生が英検準2級の実力を持っていれば、1、2年間で研究に必要となる英語力をつけさせることは十分可能。
④様々な学力の生徒を教えてきた経験から、「試験がなければ生徒は英語を学習しようとしない」というのは、全く真実ではないと考える。英語を「実技科目」として扱い、「入試」というプレッシャーを外せば、ほとんどの生徒は前向きに英語に取り組むと考える。成績は実技科目と同様、筆記・実技試験+授業内の活動を基につける。
文部科学省の入試改革案と私の提案。どちらが現実に即した提案でしょう?どちらが「英語を使う」により近いのでしょうか。? 英語をスクリーニング・選別のために使うことをやめる、ここから学校英語の未来が開けるのです。 |