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弊社税理士のコラム 「アメリカの脱税密告制度」

私は今札幌にいて、これから東京から明日サンフランシスコのオフィスに行くことになっていますが、日本でなかなか報道されない世界で起きている税金の事件をこのコラムで知ってもらう事を心がけています。

 

アメリカでは脱税した者を密告し、それが事実なら報奨金がもらえる制度があります。2006年に脱税情報の収集を図ることから法制化し、IRS(国税局)は脱税により実際徴収することのできた税額の30%を密告者に報奨金として与えるという制度を作りました。

 

以前、スイス政府とアメリカ政府の揉め事まで発展した事件では、UBSに口座があるアメリカ人の脱税情報を開始せよと迫って、ついにUBS側も譲歩せざるを得ない事態に陥り、それが元で、スイスの銀行の秘密性が崩れたこの事件は、当時UBSのプライベートバンカーだった男が、IRSに脱税をしているアメリカ人情報を密告したことがこの事件の発端でした。

 

その結果、この男は先日、IRSから1億9百万ドル(約90億円)の報奨金を受け取りました。密告するだけで90億円もの大金を手にするわけだからすごいのですが、アメリカではこのニュースは関係者に衝撃を与えたと言われています。と言うのは、この金額は予想されていたよりもはるかに少なかったからです。

 

そもそも、IRSはこのプログラムに前向きではなく、議会や裁判所でどうしてこのプログラムを利用して情報収集を行わないのか、また情報収集したとしても報奨金を支払うのになぜこれほど時間がかかるのかと問われ、IRSは窮地に立たされていた中、今回の支払いが行なわれました。

 

ただ、この情報提供者にとって、このプログラムでクレームをする前に気をつけなければいけないことが何点かあります。この男はそれを知らなかったばかりに、彼はこの大金受取りを刑務所の中で知らされたのです。

 

報奨金制度のプログラムで気をつけないといけない事が何点かあるようです。一つ目に、この制度には二つのプログラムがあって、一つは納税額、ペナルティー、利息を含めて200万ドル以上ある場合、また個人の場合は総収入が20万ドルを超える場合で、その場合の報奨金は15%から30%です。ただし上限がありません。この水準に満たない場合は脱税額の15%までで、上限は1000万ドルとされています。

 

二つ目に報奨金を得るには、IRSの申告に使うFORM211をファイルしなければならないので、弁護士、会計士を雇わなければなりません。三つ目に、IRSは密告者がその脱税を計画し、実行した本人である場合は資格を剥奪しますが、その計画に参加している場合には資格を有します。

 

この男は報奨金を貰いましたが、懲役3年4カ月の実刑判決を受け、この前、収監され、現在服役中です。判決によると、彼はすべてのUBSの顧客情報をIRSに提供せず、彼のもっとも重要な顧客の情報を何人か隠していたのです。それがIRSとアメリカ政府を騙したとして懲役刑になったのですが、彼自身が仕組んだ脱税ではないので報奨金は貰えたということです。

 

最後に、この報奨金は密告者としての所得として課税対象になります。また弁護士費用は報奨金の30%、したがって手取りは4割となります。このように報奨金制度はいかにもアメリカ的ですが、日本も税収難にあえいでいて消費税や相続税をあげる事だけの発想より、ねたみ社会の日本です、むしろ密告制度の方が実質的な税収が増加するかもしれません。

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