1990代以降、ウォール街やロンドン市場も債券金融の世界的な中心地になったことから考えて、債券金融でアメリカ覇権を延命するやり方はイギリスが考案し、イギリスとアメリカの言いなりであった日本とドイツに輸出代金として債券の受け取りを了承させていたわけです。
アメリカ覇権を黒幕的に握っていたイギリスのシティーオブ・ロンドンは、アメリカ人よりもアメリカ覇権の延命を望んでいました。一方、日本とドイツは対米従属の敗戦国でイギリスとアメリカの言いなりで動いていたため、アメリカ以外に輸入してくれる市場がなかったように思います。
1971年のニクソンショック(金本位制度停止)によってで一旦は失墜したアメリカの信用は、イギリス主導で国際協調体制が作られたことによって蘇生しました。その後のG5やG7に象徴される1970年代以降の国際協調体制は、日本とドイツが経済面でアメリカよりも上位になった後も「アメリカだけが超大国」と宣言し続け、アメリカの覇権維持のため協力し続けました。
イギリスが日本とドイツに「アメリカがナンバー1」と叫ばせるのが1970年代以降の国際協調体制であり、自由貿易体制はその一部でしかなかったように考えられます。米国債を頂点とする債券格付けの制度が権威づけられ「米国債や米ドルは世界で最も信用できる安全な投資先である」という神話が醸成されました。
アメリカが負債を増加させ、世界中から輸入し続け、それが世界経済を牽引するアメリカの覇権延命体制は、ニクソンショックから45年以上も維持されてきました。この間、米国債や社債、不動産担保債券、ジャンク債、株式などのアメリカの金融商品の総額は100兆ドル近くになり、45年分のアメリカの貿易赤字が負債に化けています。
米ドルが金地金と縁を切って20年後の1990年代には、米国債を頂点とする債券金融システムこそが本当のであり、金(ゴールド)など時代遅れだという考え方が世界の常識となり、米ドルや米国債を「紙切れ」などという者は頭がおかしい反米主義な妄想家と呼びました。世界的な詐欺が見事に45年も成功を収めてきたことになります。
しかし、借金を増やすほど金持ちになるという考え方は、バブルを膨張することにしかならないわけです。あらゆるバブルは、最終的に崩壊することになります。例えば、2008年に起きたリーマンショック(世界金融危機)はアメリカの債券金融の巨大なバブル崩壊の始まりでした。
リーマンショックは、アメリカの金融界が不動産担保債券を低担保に過剰発行しすぎた挙句に起きましたが、危機発生のもう一つの原因はアメリカが2001年9月11日の同時テロ事件以来、単独覇権主義を標榜しつつ、大量破壊兵器がないのにあるとウソを言ってアフガニスタンやイラクに侵攻するなど、覇権国としての国際信用を失墜させることをやりすぎたことです。
アメリカの軍事面の覇権と金融面の覇権は全く別物として見られがちですが、アメリカが軍事面で世界の安定を実現してくれると世界から信用されることが、世界一の赤字国なのにドルや米国債が世界最強と崇められ続ける金融覇権の源泉となっています。
アメリカが2003年からアフガニスタンやイラクなどで戦争経済を始めたことで数多くの失策を続け、軍事面で世界の信用を失ってから数年後にリーマンショックが起き、金融面の信用崩壊が露呈したことは偶然ではないと思います。
リーマンショック後、アメリカは取引が減少した米国債が売れているように見せかけるために金利を下げようと、FRBが米ドルを大量発行して債券を買い支える金融緩和(QE)を始めました。しかし、FRBが不健全な金融緩和を拡大できなくなると、日本と欧州の中央銀行に金融緩和を肩代わりさせ、金融システムを延命させました。
ただ、日本も欧州も金融緩和を行うことがこれ以上できなくなっており、縮小・終了させていく方向に進んでいます。いずれにしても、アメリカの延命策が尽き、リーマンショック以上のバブル崩壊が起き、45年続いたシステムがいよいよ終焉を迎えようとしているわけです。そして、新たな延命機構が発案され、しばらくしてそのシステムに移行していきます。
トランプ大統領が誕生したのはちょうど金融緩和の終わりが見え始めたのと同時期にあたります。世界はできるだけ早くアメリカだけが巨大な消費地だった世界体制への依存をやめねばならないわけです。
それでもいつまでもアメリカ依存を続けたいグローバリズム勢力が、日本の安倍政権を含め世界のあちこちに巣食っています。トランプ大統領はそうした状況を破壊するために、アメリカの自由貿易の伝統を破壊する鉄鋼関税を打ち出したり、NAFTAやTPPを敵視する動きを続けているということです。
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