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今、世界では、潜在的な白人至上主義の支持者の大多数は、グローバル企業が支配する現在の格差社会に反発し、移民と難民の流入による社会秩序の変化に激怒しながらも、自分では何もできないと諦めているように思います。
しかし、今回のニュージーランドで起こった銃撃事件の犯行声明に込められた強い呼びかけは、こうした潜在的な支持層の心を強く揺さぶり、今後もイスラム系移民の攻撃と殺戮に駆り立てる可能性があります。
このタラントン容疑者の呼びかけに応じた人々によって、これから多くの類似した事件が引き起こされるかもしれないというわけです。今回の事件は、反グローバル運動がさらに過激になる転換点を象徴する事件となったともいえそうです。
ニュージーランド銃撃動画とソーシャルメディア、拡散と削除の攻防
それでは、ブレントン・タラント容疑者の犯行声明に込められた呼びかけとはどういったものなのか、英語をなるべく理解できるような日本語に訳してみました。
Reading Manifestos: Restricting Brenton Tarrant's ‘The Great Replacement’
犯行声明は「偉大な交代（The Great Replacement）」という77ページの文書になっており、イスラム系移民の大量流入によって、ヨーロッパに起源を持つ白人種のキリスト教文化と、それに基づく伝統的な社会は、欧米各国で危機的な状況にあるとしています。
特に、イスラム系移民の出生率は非常に高いので、このまま行くと欧米のどの国でもキリスト教の白人種は少数派に転落した結果、社会と国家全体がイスラム系移民によって乗っ取られると主張しています。
この状況を逆転するためには、2.6人を越える白人種の出生率が必要だが、これを実現できる欧米諸国は皆無で、イスラム系移民を強制的に排除するしかないと主張しています。犯行声明は質問に自分で答えるという、自問自答の形式になっています。
今回の凄惨な攻撃の理由を書いた後、自分がこのような攻撃に至った経緯を説明し、これが移民の流入を嫌悪しながらも、積極的な行動には出ていない大多数の潜在的な白人優越主義者に行動を促す呼びかけになっていることがわかるはずです。
結局、この攻撃に至った経緯の説明は、何ら根拠がないタラント容疑者の極端な思い込みに過ぎないことは明らかで、フランスの無名戦士の墓に埋葬されているのは、第一次と第二次世界大戦を中心にした戦死者のことです。
ナチスドイツの侵略から祖国を守るために命を捧げたとはいえるかもしれませんが、イスラム系移民の流入とはなんの関係もないことがわかります。自分を祖国に命を捧げた無名戦士と同一視し、イスラム系移民の殺害を決意するタラント容疑者は、それこそ常軌を逸した狂った思い込みの幻想であることは間違いありません。
しかし、グローバル企業による支配に反発し、流入するイスラム系移民と難民に苛立ち、白人種であること以外に自分のアイデンティティーを感じられなくなっても、未だに行動をしていない潜在的な白人至上主義者にとって、タラントの言葉が魂に突き刺さってしまっていると思われます。
この言葉と呼びかけがもたらす影響は大きいように感じますが、これに影響を受けた人々が増え、反グローバル運動の中でも過激な勢力である白人至上主義者たちを、さらに一歩進んだ暴力的な段階へと進むことになるように思います。
私たち日本人は、非白人でありながらも、何としてでもこのようなテロ集団に抵抗しなければならないわけです。似たようなメッセージは実は日本にも蔓延しており、特に最近は愛国を謳う政治家や思想家やいわゆるネトウヨと呼ばれる一般国民が近隣諸国への憎悪感情を表しています。それに反抗して近隣諸国からは逆に反日感情を表す声も聞こえてきています。
日本にはかねてからあった在日外国人への差別に加わり、新たに入国してきた移民や技能実習生などへの差別的発言、難民受け入れを拒む政策、入国管理局での外国人の扱い、さらに慰安婦やアイヌ問題などを含め国連人種差別撤廃委員会に指摘されている人権問題もあります。
憎悪の種類は様々で、LGBTやシングルペアレント、ホームレスなど社会的弱者とされる人々に対する差別も全く関係のない問題ではないように思います。
人々を特定のグループに分けて、自分たちのグループとは異なるとして憎悪したり差別したりする思想そのものが過激派犯罪につながる温床となる傾向があり、自分はそのような思想に共鳴しないからといってただ傍観しているだけでなく、そういった風潮を問題視することも大切だと思います。
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