最近、中国では富裕層の資金の国外流出を加速させるビットコインを筆頭に仮想通貨には規制するものの、法定仮想通貨とブロックチェーンの導入にはとても積極的だということはすでにご存知だと思います。
中国の金融当局は、デジタル人民元の発行に向けて世界のどの国よりも積極的に動いています。中国人民銀行が発行するブロックチェーン技術を取り入れた「法定デジタル通貨7(CBDC7)」ですが、CBDCとは、Central Bank Degital Currency(直訳:中央銀行デジタル通貨)の略になっています。
この法定デジタル通貨は、中国の「一帯一路経済圏」の決済手段としての利便性があるというわけですが、これほどまでに中国が世界に先駆けて法定仮想通貨の導入へと動いているのには理由があると考えられます。
まず中国の中央銀行である中国人民銀行は、仮想通貨研究所という組織を立ち上げ、法定暗号通貨の導入を進めていましたが、2017年11月にこの研究所は法定仮想通貨移行の目的を次の3点にまとめていました。
一つ目は、決済・決算の全てがデジタル化されることにより自動化が進み、効率が増すというものです。そして二つ目は、資金移動の流れが可視化されることにより、地方に住む農民や貧困層にも融資や決済などの金融サービスが提供できるようにするというものです。
また三つ目は、資金移動の可視化によって中国人民銀行は資金移動のすべてに関する情報が取得可能となり、適切な金融政策を展開する助けになり、最後に経済の津々浦々まで把握できるようにするため、小さな動きも見逃さない金融リスク防止システムの構築が可能にするというわけです。
コストの利便性に焦点を置いたこれらの3つの目的は、暗号通貨によって資金の流れが可視化できることがポイントになっているのがわかります。つまり、政府による経済の管理体制の強化が目標です。
暗号通貨は、市場経済を促しながらも共産党一党独裁による国家管理型の資本主義体制を構築している中国にとっては最適な経済管理の手段といえます。そのため、中国は世界に先駆けて法定暗号通貨の導入に向けて動いているといます。
さらに、中国はブロックチェーンの導入にも積極的で、一般的にブロックチェーンと聞くと、私たちはビットコインを中心とした仮想通貨の基礎となっている技術をイメージしますが、ブロックチェーンの適用範囲は通貨に限定されるわけではないようです。
ブロックチェーンとは、ハッシュ関数で暗号化したデジタルデータのブロックを無数のコンピューターに存在する分散台帳に書き込み、すべてのブロックを相互にチェーンで結ぶテクノロジーのことです。
データのブロックが分散台帳に書き込まれるためには、これに埋め込まれているハッシュ関数の暗号を解読するマイニングの作業が必要で、この解読作業を行うマイナー(採掘者)には、一定の手数料が仮想通貨で支払われる仕組みになっています。
2009年にサトシ・ナカモトという日本人風の人物が論文で述べたビットコイン用のブロックチェーンのモデルだったわけですが、このモデルをベースにプログラムの自動実行機能を実装したイーサリアムなど、それぞれユニークな特徴を持つアルトコインのブロックチェーンが発展しました。
このモデルの適用は、ビットコインのような通貨に限定されるわけではなく、分散台帳に書き込まれるデジタルデータには種類の制限はないことがわかっています。例えば、英会話レッスンの記録や不動産登記、住民票、選挙の投票、配送データや電力の送電網などあらゆるデータがブロックチェーンで処理できるようになります。
そのためブロックチェーンは、既存の社会インフラを根本から刷新してしまう潜在的な可能性を秘めていると言われているため、インターネット以来の次の産業革命と呼ばれる所以になっているわけです。
|