世界の食料価格、10年ぶり高水準 中国需要が押し上げ 国連調べ、5月
(出典:2021年6月4日 日本経済新聞)
今、世界の食料価格が急上昇し始め、2008年にリーマンショックが起きた時以来、13年ぶりの高水準を記録しています。
昨年と比較して上昇幅が大きいのがトウモコロコシや大豆、砂糖、そして植物油です。いずれも6割以上も割高となり、日本のスーパーに行ってもジャガイモなど野菜の価格が高いことを実感します。
一部では「世界的な食料危機が始まった…」と懸念されていますが、そもそも「食料危機の定義」とは「地球温暖化(寒冷化)による環境破壊が限界になり、異常気象や水源の枯渇、そして利用可能な農地の縮小などが原因となり、農業生産が長期的に停滞する」ことです。
つまり、農業生産の限界点に達してしまうと、80億人を超えようとますます増加する人口に対して食料の供給ができなくなるため、世界各地で集団的な飢餓が発生するというわけです。当然、供給量が減少することで、食料価格は高騰する仕組みが働いています。
しかし、今回の食料価格高騰の原因は、中国が養豚を増やすために飼料用穀物の購入を増やし、生産地であるアメリカ大陸で気温40度を超える熱波など、不安定な天候から収穫が一段と減るとの見方が強まったからです。
味の素、マヨネーズを約1~10%値上げ 「現状価格の継続は大変難しい」
(出典:2021年4月28日 ITmediaビジネスONLINE)
実際に、トウモロコシや大豆などの高騰は、飼料としている畜産業にも大きく影響し、食肉価格全体を高騰させる原因にもなっています。また、加工食品などに使うパーム油の価格が高騰していますが、これは生産地である東南アジアで不作が起きているからです。
その他、バイオディーゼルなど自動車などの燃料需要にパーム油が振り向けられるようになり、これから食料品全般の価格上昇が予想されています。日本でも、食品大手の味の素やキューピーなどは、マヨネーズの価格を7月1日から10%も値上げすると発表しています。
その他、醤油やソース、味噌など大豆が原材料の商品が値上げされ、輸入牛肉を提供している牛丼チェーンやラーメン店なども値上げが始まる可能性があります。
米西部広範囲で気温40度超えの記録的高温水不足も深刻に
(出典:2021年6月29日 NHK NEWS WEB)
当然、こうした加工食品の高騰には新型コロナウイルスの影響があるのは明らかです。欧米諸国では、都市封鎖と移動制限を導入したため、農業生産に大きな影響を与えていると思います。実際に、収穫中止や食肉加工工場の閉鎖もありました。
さらに、移動制限で農作業の担い手である低賃金の外国人労働者が不足した例も多く、カリフォルニア州では貴重な季節労働者である不法移民のメキシコ人労働者が、出入国を断念したという声も多く聞こえてきます。
今後、世界的な干ばつや洪水などの異常気象が起きていることを考えると、地球温暖化(寒冷化)による異常気象はさらに激しくなり、特に最大の食料輸出国であるアメリカ西海岸では気温40度を超える熱波が発生しています。
広大な農地が広がるカリフォルニア州は、アメリカ国内の野菜の30%以上、果物の70%以上が生産されていますが、熱波による干ばつで農産物に影響が出る可能性が高いと思います。生産数が減少すれば、農産物の価格はさらに上昇します。
油、牛肉、そば…相次ぐ食料品値上げの原因は「爆食チャイナ」だった
(出典:2021年6月22日 Yahooニュース)
一方、中国は急速に景気回復が起きており、食料品への需要が増大していると報道されています。中国の2021年1~3月の経済成長率は、前年同期比で18%を超えて国内消費が爆発的に増えているようです。
昨年、新型コロナウイルスの影響で抑えられていた国内消費と需要が一気に開放され、外食産業も含めあらゆる形態の食料品の需要が増えています。中国人は、さらに経済的に豊かになったことで爆買いならぬ、「爆食」をするようになりました。
つまり、14億人の胃袋を満たすために牛や豚、鶏肉などの生産を拡大するしかなく、飼料となるトウモロコシや大豆を始めとした穀物を中国企業が世界中から輸入しているわけです。
生産国によっては、変異ウイルスに感染する人も増えており、未だに都市封鎖や移動制限が続いている状態にあります。それに加え、異常な天候変動による影響で供給できなくなりつつあります。
すでに、中国人の需要に応えるだけの供給力の確保が難しくなっている中、いよいよ日本国内の食料価格も8月以降に上がってくるものと考えられます。
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