もし、景気後退が穏やかなものであれば大きな問題を引き起こすことはありませんが、2007年のサブプライムローン問題やローン証券を束ねたデリバティブ金融商品の破綻のような金融危機が起きる場合、景気後退だけでは済まないのは明らかです。
いわゆるリーマンショック級の金融危機が再び起きれば、今度ばかりは経済構造そのものの抜本的な改革さえ要求される大きな転換になるのは確実です。
しかし、金融危機が起こるかどうかの判断は難しく、起きることを予感させる兆候はあるとする意見も多いものの、金融市場は実質的にAI(人工知能)が相場を動かしており、最新技術が占めていることからも、十分な専門知識が求められています。
そこで今回は、欧米諸国から見た俯瞰的な視点から日本を含めた先進国経済の経済構造や、金融市場で本当に何が起こっているのかをまとめたいと思います。時間の都合上、要約することになりますが、状況判断のための指標にはなると思います。
現代の先進国経済というのは、構造的な低迷状態にあり、生産拠点の海外移転やサプライチェーンのグローバル化による先進国の産業空洞化、これを背景とした中間層の賃金低下による国内消費の低迷などが、先進国の長期的な成長率下落の原因だとされています。
こうしたグローバル化に伴う一連の現象は、少子高齢化や深刻な人手不足、それに伴う国内消費の低迷という構造的な原因が長期のデフレを引き起こし、経済成長を妨げていることが現状としてあります。
つまり、日本を含む先進国の経済は、深刻な人手不足・生産年齢人口の縮小などから15年ほど前から減速していましたが、この方向性がグローバル化によってさらに深刻さが増し、長期的なデフレ縮小化に向かっているわけです。
世界同時金融危機が起きた2008年後半、日本を含む先進国が経済政策としたのが、各国の中央銀行による低金利政策であったということです。中央銀行(日本は日銀)が巨額の国債や株式を買い取るという、量的金融緩和政策を始めました。
これによって、金融市場には莫大なマネーで溢れ、投資家の収益期待も減退することなく、先進国では少子高齢化や人手不足などの構造的な原因とは別に、投資はさらに活発になり、高い収益性が求められました。
こうした状況は、リーマンショックで頂点に達した2008年以降も変化はなく、この10年ほどの不況を乗り越えるために中央銀行が採用した量的金融緩和策の強化で、景気は押し上げられ、投資家の収益期待は高まったわけです。
この強い収益期待に大企業が始めたことが、他企業を①買収(M&A)し、②自社株を自ら買って株価を上げ、③債権を金融商品化して売ることでした。これらの動きは相互に連動しており、今後の景気後退が金融危機を伴うのかどうか判断する上で理解しておく必要があると思います。
特に、②の企業による自社株買いは、市場でその株価が上がるサインとして受け取られており、実際に株価は上昇しています。多くの企業がこのような自社株買いに殺到したことが、中央銀行(日本は日銀)の「ETF買い」と同様、株価を吊り上げているということです。
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