中国、研究者の採用通じて知的財産を米国から移転 米上院が報告書
今回のメインテーマは、アメリカ司法省に属する警察機関の一つで、国内の治安維持を担い、テロや政府の汚職、複数の州に渡る強盗事件などの捜査を担当している連邦捜査局(FBI)が、上院議会に提出した中国の人材登用を警告する報告書についてです。
2020年以降のトランプ政権の基本政策を予測するためには、対中国政策について知る必要があるものと思われます。その上で、重要なのが情報機関FBIの報告書です。
実際に、アメリカと中国は貿易戦争で妥協が成立し、両国が相互に課している高関税の一部撤廃が期待されています。中国は、知的財産権の侵害に対する罰則を強化するとし、またアメリカとの貿易協議で争点になっている問題の一つに対処すると発表しました。
その内容は、知的財産権侵害で刑罰を科すボーダーラインの引き下げを検討するといったものですが、中国は2022年までに知的財産権の侵害を減らすことを目指し、侵害を受けた被害者が賠償を得やすい環境にする計画がうかがえます。
さらに、中国はアメリカとの間で貿易問題に関する閣僚級の電話協議を行ったと発表し、米中関係が悪化する中、貿易問題については交渉を続けることで同意し、合意に向けて交渉を続ける姿勢をアピールしています。
米中の最終合意にはまだ時間がかかるものの、こうした動きは米中貿易戦争の一時的な終結が近いとの楽観的な観測から、世界各国の株式市場が上昇を続け、ダウ平均株価は最高値を更新しています。
そのような状況の中、来年早々には米中で合意が成立し、いよいよ米中貿易戦争が一時的に終止符が打たれるのではないか、という期待が高まっています。マスメディアは、米中関係の一時的な妥協による正常化を期待すると報道しています。
しかし、現実的にはそうした楽観的ではないことを示すFBIの報告書が公開されています。この報告書の内容がトランプ政権の次の対中国の軸になれば、アメリカは中国の発展を完全に防ぐために、中国との関係を徹底して失くしていくものと考えられます。
このFBIの報告書は、アメリカ上院議会の「国家安全保障と政府の小委員会」に討議資料としてFBIから提出されており、中国が行っているアメリカ人材の引き抜きや登用の国家の安全保障に与える脅威について細かく調査されていることがわかりました。
米FBI長官「スパイの脅威」中国に警戒感
報告書によると、中国には様々な人材引き抜きと登用を目的とした計画があり、そのほとんどを中国政府が主導し、科学技術発展のために必要な人材をアメリカから引き抜き、知的財産権を継続的に侵害していると結論づけています。
これまでアメリカは、海外から優秀な研究者を数多くリクルートしてきましたが、中国はアメリカのこうしたオープンな人材登用を悪用し、多くの在米研究員を中国が必要とする科学技術や軍事技術を得るために計画的にリクルートしてきました。
実際に、彼らの多くがアメリカの何倍もの高額な年棒と充実した研究環境を約束され、引き抜かれているわけです。
FBIの調査では、引き抜かれて中国に移動する前に機密情報をダウンロードした研究員や、アメリカの研究所から研究費を得ているにもかかわらず中国政府からも研究費を得ていたケース、またアメリカの財団から研究費を得るためにウソの報告をしていたケースなどが多くあったと報告しています。
この報告書の調査対象は、全て国立の研究機関であり、そこの研究員が中国政府にリクルートされているということは、アメリカ国民の税金の支出で行われた研究の成果が中国に利用されていたことになるということです。
これらの成果は、全てアメリカに所属しているわけですが、報告書では中国による知的財産権の侵害として中国を危険視しています。
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