いつの時代でもそうですが、世界大戦や大規模テロ事件などを引き起こす遠因となるのが、不満を持った人々の感情の爆発です。これが人類の歴史そのものであるということです。
我々としての感情とは何か?―集団間紛争における感情の役割を中心に―
よく「歴史は繰り返す」と言われますが、これは全く同じ出来事が繰り返しているわけではなく、科学技術を発展させながら矛盾を減らしていく社会制度を立案する人間の理性には、まだ動物的で荒々しい感情が残っているということを意味しているように思います。
このような感情は、昔から人間に備わっている無意識の本能であるかもしれません。理性がなくなり、無意識に荒々しい感情が外に出てくると、少数派の人々は彼らに押し流されてしまうということです。
戦時中の文献を読むと、日本では戦争を反対した人々を「非国民」と呼び、村八分にしてきたことが書いてあります。実際に、小説や漫画、映画などにもそのようなシーンは多く表現されています。ナチス政権のドイツでも全く同じことが起きています。
そして、多数派が少数派を完全に呑み込んでいくと、歴史の流れは人間の無意識に本能的にプログラミングされた方向に動いていくしかありません。もはや止められなくなった戦争は、過去幾度となく勃発していますが、この本能的なプログラミングによるものであるということです。
これまで歴史的に起きてきた大きな変化というのは、多数派が無意識に抑圧されている感情の噴出が決定的な役割を果たすことになり、私たちの未来というのは、結局、過去から永遠に続く無意識の感情という過去のフラクタル(再現)であるわけです。
つまり、全く同じ歴史が繰り返しているわけではなく、私たち人類が未来に向かうには無意識に受け継がれた過去を振り返る必要があるということです。過去こそ未来をつくるエネルギーになっている可能性があります。
今、これまで抑圧され、安全に管理されてきたはずの危険な感情が世界のあらゆる地域で噴出し、爆発しようとしているように思います。実際に、日本でも抑圧され続けてきた人々の不満の噴出が出始めています。
それを解除したのは、紛れもなくグローバリズムと金融資本主義が生み出した極端な経済格差、そして日本のような先進国で起きた中間層の低所得層(貧困層)への転落です。
これが背景となり、抑圧された感情は安倍政権や元官僚、NHKや民放、などのマスメディア、そして在日朝鮮・韓国人などに向かって爆発しています。
経済格差の極端な拡大と中間層の低所得層への転落は、世界各国で格差是正運動を活性化させており、公平な所得の再分配を実現できる大きな政府を構築する運動となって現れています。そして、日本では山本太郎率いる「れいわ新選組」がそうなのかもしれません。
一方、アメリカではイスラム系やヒスパニック系の排斥を過激に主張する白人優越主義が台頭しており、様々な場所で白人による銃乱射事件が発生しています。キリスト教やイスラム原理主義の共通する特徴の一つに、自分の宗教性を唯一の真実とする過激な攻撃性を生み出す、というものがあります。
こうした感情というのは、多くの人々によって津波のような流れとなり、大きな集団として対立と破壊の連鎖を繰り返すことが今後は予想されます。この感情の流れは、グローバリズムによって世界のあらゆる地域で蓄積されてきました。
そして今、世界中で発生している様々な対立を頂点まで押し上げており、中国共産党と香港人の騒動やアメリカ国内での銃乱射事件、ヨーロッパ諸国のEU離脱運動、米中や日韓対立など、こうした問題を私たちがますます拡大させているわけです。
いよいよ、最後の一突きとなるのは、世界経済が景気後退(リセッション)にようやく入り、これから恐慌(ディプレッション)に突入することで、危険な集合的感情を解除できるようになるかもしれません。
すでに世界的な景気後退は始まったわけですが、恐慌までの間は集合的感情がさらに激しくなり、コントロール不能になる可能性があります。2019年は、あくまでその一歩手前の時期であり、2020年から本格的に激しい時代になるものと思われます。
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