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一度は引退を表明したにもかかわらず、結局復帰する方が大勢ます。アニメーション作家の宮崎駿氏やプロレスラーの大仁田厚氏など、日本人というのはつくづくこういう人たちが好きな民族でもあります。
これに対して、サッカーの中田英寿氏やプロ野球の新庄剛志氏のように、完全燃焼する前に自ら引き際を決めて引退した人たちもいますが、彼らが国民的に愛されているとは言い難いと思います。
つまり、継続・続行というような言葉がもたらす前向きさより、どこか捻じれており、何かしら病んでるような気がするわけです。
一方、日本人はリセットという言葉が好きな民族でもあります。意外にもリセットの誘惑に日本人は抵抗力がないのかもしれません。誰かに「すべてをチャラにし、一からやり直そう」と言われると、NOと言えない気質があるということです。
「構造改革」と言われると思わず興奮し、「新世界秩序」というスローガンに動悸が速まり、「一億総中流」「一億総白痴化」でもやる気を出し、とにかく「刷新」するということに希望を持ちやすいのが日本人ではあります。
その理由として、それまでの自分の人生を簡単に捨てるのが自分らしさの探求であり、自己実現であると私たち日本人が信じているからというものがあります。結果、このような属人性の考え方をするのは世界で日本人だけであることは間違いありません。
そして、そのような属人性的な考え方は、その後の未来を的確に予見してきました。2011年3月11日に起きた東日本大震災以降の日本人は、原発事故を全部なかったことにしてリセットしたいという強烈な願望によって迷走しているように思います。
例えば、ダイエットを目的にしたスポーツジムを展開しているライザップなどは、正にリセット願望の最たるもので、今までの不摂生を短期間だけ必死で努力するだけですべてチャラにしようとしているわけです。
ライザップは、スパルタ指導の英会話スクールも全国で運営していますが、数年前から有名人を起用し、魅力あふれる演出で大量のテレビCMを流したことで一時話題になりました。ところが、本業とは異なる赤字企業を次々と買収し、一気に拡大路線を図ったためにその影響が今になって出てきたように思います。
つまり、金融を用いたビジネスモデルによってイメージだけを高め、お金を得るというマーケティング手法ではもはや時代遅れになりつつありように思うわけです。
そして、政治の世界でも震災以降、リセット願望の暴走が猛威を振るっており、安倍政権や野党などもリセットを叫びながら攻撃するという自転車操業をここまで繰り返してきました。ところが、ここに来て自民党の自転車操業はさすがにいつまでも続かないのではないでしょうか？
選挙で負けるたびに引退宣言をし、内輪モメした挙句に国政に打って出るという、誰も予想さえしていなかった大仁田厚氏のような手法で政治家としてまた復帰しようとしています。
これは多くのサラリーマンにも言えることです。会社の上司に何度も繰り返し「辞める、辞める」詐欺発言をしてきた方たちは、本当に自分自身ををリセットできたと思ってるのでしょうか？
私には「辞めないままでいることを止められない」方と同じ病の中に飛び込むことによって新たな道を模索しようとしているように見えるわけです。ひたすら「リセット」を叫ぶことの自転車操業を続けてきて、「辞めないままでいることを止められない」という病をも取り込みながら、ここに来て厄介な段階に入ったのではないでしょうか？
「辞めないままでいることを止められない」＝「すでに限界を超えているのにいつまで耐え続ける」ことと「リセット」の組み合わせは、あるところまで延命できたと思ったら、ある日突然極端から極端へと簡単に振れる、という日本人の気質を形作っているということです。
実際に、第二次世界大戦の末期には国家の体裁を維持できる限界を通り越しても日本国民は耐え続け、そして終戦とともにすべてをリセットした経験があります。それがこじれた挙句に「辞めると言い続けることを止めないままでいることがやめられない」ように見えてきました。
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