安倍政権による公表された経済指数の数字のマジックは、国内製造業の設備投資額にも見ることができます。
安倍政権は2012年には2.5兆円であったのが、2017年には2.9兆円に増額したと公表していますが、実際には2009年度はそれを大きく上回る3.8兆円もあることがわかっています。2010年もおおむねこの水準を維持していたものの、2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で2.4兆円まで一気に減少していました。
ということは、震災後7年も経つというのに、これまで製造業の国内設備投資は震災後の水準を下回ったままであり、それ以前の状態を未だに回復していないということになります。国内の設備投資は、3本の矢の中で最もアベノミクスを成功させるための重要な政策であったはずです。
これが未だに2011年以前の状態であるということは、自民党、そして安倍政権によるアベノミクスでは日本経済は思ったほど成長していないことが分かってくるということです。
さらに、日本の主要産業とも言える製造業を見ると、数年前とはかなり異なる様相になっているのが分かりつつあります。2001年から2007年まで続いた小泉政権の時は、中国など海外に生産拠点を移し、そこで安い労働力のメリット生かして生産していましたが、日本企業の国際競争力と製品開発力が低下し、むしろ製品開発力のある中国企業のサプライチェーンの一部になってしまっています。
つまり、日本企業の部品供給先としての下請け化を進めただけで、小泉・安倍とも日本経済を衰退させた張本人ということがはっきりとしてきつつあります。
この結果、日本の製造業が経済をけん引する力を失い、中国企業の成長と拡大に依存する形で日本の製造業も成長するという状態になってしまっているわけです。今後、日本の製造業が力強く復活し、日本をけん引するというようなイメージは、数字から見てももはや持てなくなりました。
いずれにしても、アベノミクスで日本経済は必ずしも成長していないことが分かりました。しかし、そのようなアベノミクスの状況をさらに景気が上昇しているように見せかけているのが、アベノミクスのもとでも継続されている日銀によるゼロ金利政策です。
ゼロ金利ということは、市場には余剰な資金が溢れ、どんな企業でも銀行など金融機関から簡単に融資が受けられる状況にあるということになります。しかも、極端に低い利率の融資が得られることができるはずです。
このような状況であれば、実際に経営悪化によって資金繰りが悪化している企業であっても、融資で経営を継続することができるわけです。つまり、実質的には利益を上げていない債務不履行に陥った企業でも、倒産を回避して経営を続けられるということになります。
しかし、こうした企業というのは、ゼロ金利政策が終わり、利子率が上昇することになれば、融資の利払い負担に耐えられなくなり、倒産が避けられない状況になるのは言うまでもありません。これがアベノミクスの現状であるということです。
公表された数値を見ると、日本経済は安倍政権が喧伝し、マスメディアが報道しているような楽観的な状態にはないことが分かるはずです。実際に、年間80兆円の国債を買い取り、13兆円の公共事業を実施するという異次元的な経済政策を実施しているにもかかわらず、今のところ極端な落ち込みはないものの、日本経済は現状維持に近い状態で推移しているだけでしかないということです。
当然、円安効果によるインバウンド需要(外国人観光客)の増加で観光業は好調です。しかし、人口が1億2000万人も抱える日本のような大きな経済規模の国を、観光業がけん引するには限界があると思われます。
結局、1980年代後半まで高度経済成長とバブル期の成長産業をけん引したような、家電や自動車のような成長産業が必要になり、私たち日本人はそれがアベノミクスの3本目の矢として期待していましたが、ものの見事に裏切られたということです。
これはアベノミクスの現状について書いたことですが、このような状況認識が早ければ2019年1月から危機の兆候が現れ、2022年には本格的な危機に突入するという予測の根拠になっていることをお伝えしたわけです。
果たして、金融危機やハイパー・インフレーション、そして最終的にデフォルト(国家債務不履行)するまで至るものは一体何を引き金に起こるのでしょうか?おそらく危機の兆候は事前に分かるはずであって、危機が起こった時、私たちはどのように対処して生き残れば良いのでしょうか?
危機の発現までにはもう少し時間的な余裕があると思われますが、その間に準備することがあります。このコラムでは、あらゆる言語で公開・非公開情報を徹底して集め、将来の状況を予測すると同時に、有効なサバイバル方法を必ず見つけ出そうとしています。
最後に、アベノミクスの本質は、円安ドル買い政策でしかないことはこれまで何度も説明しましたが、金利が上昇することで経済破綻に導くことも予想することができます。アベノミクスとは、あくまでも国内問題であり、日本国債の格下げによる金利上昇こそが日本経済の息の根を止めることになるというわけです。
最近、財務省はある動画をYouTubeにアップしました。
https://www.mof.go.jp/gallery/201808.html 財務省ホームページ もし金利が上昇したら?
たった30秒の動画が伝えようとしていることは、「金利が上がれば、国債の利払費が一気に上がり、国家予算が組めなくなる」ということです。財務省は、これ以上詳しくは国民に言えないと思われます。そのくらい事態が悪化していると考えられます。
この財務省からのメッセージは、「ある日、金利が突然上昇し始めたらもう止められなくなる」という意味があります。デフォルト(国家債務不履行)とは、政府が国民から借りた銀行預金に対し、期日が来ても利回りが支払えなくなるということです。
それどころか、元本さえ払えなくなり開き直ったのが、戦後すぐの1946年2月に起きた金融緊急措置令の発布とその直後の預金封鎖であったわけです。「ある日」というのは、「金融緊急措置令」が発布される日のことです。今現在、その兆候は至るところに出ています。
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