国民をミスリードする「財政破綻しない論」
 (出典:2011年1月11日 アゴラ*)
一昔前、テレビに経済評論家などと顔を出している自称・専門家の多くが、「日本政府は国民から借金をしているので、外国から金を借りているわけではない。しかも日本は世界最大の債権国であり、財政破綻するなどありえない…」と主張していました。
日本の対外純資産、33年連続で世界最大 23年末471兆円
 (出典:2024年5月28日 日本経済新聞)
しかし、この主張こそ根拠がなく、かえって日本国民を混乱させてきました。また、「日本の対外資産、33年連続で世界最大 23年末471兆円」という日本経済新聞の報道も、日本がいかにもお金持ちであるような印象を与えています。
日本の対外純資産471兆円という意味は、日本が海外に投資している総資本が471兆円ということです。つまり、日本から投資を受けている諸外国から見れば、日本に471兆円の借金(債務)をしている、ということになります。
帳簿上は471兆円ですが、このうちの約半分は米国債であり、最初から回収不能を前提とした「不良債券」が含まれているわけです。そして、日本円から米ドルに換金されている以上、ドル建てで対外純資産も表記されるべきです。
ところが、日本の主要メディアは昔から円建てで表記する習慣があり、その時点の円建て為替レートで説明しています。一方、対資産の反対は対外負債ですが、日本は諸外国から投資を受けており、借金(負債)もしています。
商社株急騰、バフェット氏の手紙で 各社「協業を模索」
 (出典:2025年2月25日 日本経済新聞)
例えば、ドルで資産を運用している投資の神様、ウォーレン・バフェットが日本の商社の株を購入する場合、ドルを売って日本円に換金してから購入しています。要するに、商社はバフェットに対して借金(債務)を負っているということです。
別な言い方をすれば、商社はバフェットに株を買ってもらったことで、いつかは約束を果たさなければならない債務を売っているのと同じことになります。だから、日本は世界一の債権国であるのと同時に、世界一の借金(債務)国であるとも言えます。
なぜかと言えば、471兆円の対外資産があっても、現在1ドル=147円からどんどん円高が進み、75円まで高くなれば日本の対外資産はドル換算で一気に235兆円まで減ってしまうからです。その結果、日本は一転して世界一の借金大国に転落します。
また、日本で生産された製品は、アメリカで2倍の価格で売らなければ利益が確保できなくなり、しかもトランプは高い関税をかけてくる可能性があります。だから、1990年代にトヨタやホンダ、ソニーなどの製造業はアメリカ法人と工場(生産拠点)をつくったわけです。
日銀、長期金利上昇を容認 「0.2%程度」と黒田総裁
 (出典:2018年7月31日 Reuters)
今から7年前、日銀の黒田前総裁は「0.2%程度の長期金利の上昇は仕方がない…」と思わず本音を洩らしました。要するに、当時の物価水準でも0.25%まで政策金利を上げないと金融機関が次々と破綻する、という意味です。そして、それは預金封鎖が始まるサインでもあります。
植田日銀「どこまであげる?」金利1%越えのリスクシナリオ
 (出典:2025年3月5日 毎日新聞 経済プレミア)
日銀の植田総裁は、1月に0.5%への政策金利の利上げを決め、長期日本国債の利回りはとうとう15年ぶりの水準となる 1.5%まで上昇しました。実は、日銀が日本国債を購入する原資は私たちの預金であり、最後に尻拭いをさせられるのも私たち日本国民であるということです。
第一次トランプ政権(2017年~2020年)では、中国に対して貿易戦争を仕掛けたことで世界各国が恐怖に襲われ、一斉に米ドルを購入したことで「円安ドル高」に向かっていきました。つまり、当時のトランプは米ドルを守ったということです。
しかし、第二次トランプ政権では、カナダとメキシコに25%、中国に20%の関税を課したことで世界中でドル売りが始まっています。当然、「円高ドル安」が進み、1ドル=148円台にまで進んできました。
ただし、金(ゴールド)価格だけは円高でも高値を維持しており、ドル建て金価格は1オンス=3000ドルの大台に乗ろうとしています。米国債や株式を買う投資家を尻目に、賢い投資家は金の現物をどんどん購入しており、アメリカの経済崩壊を待っています。
|