3月19日、ニュージーランドのクライストチャーチで起きたモスク銃撃事件の1カ月半後の4月22日、今度はスリランカで同時多発テロ事件が起きました。
この日は、イースター(復活祭)の日でもあり、スリランカのカトリック教会や高級ホテルなど計8カ所で自爆テロが発生し、350名以上の死亡が確認されています。
テロを実行したのは、「ナショナル・タウヒード・ジャマア」と呼ばれる小規模のイスラム過激派グループで、さらに「IS(イスラム国)」系のアマク通信は、「有志連合とキリスト教徒の市民を狙ったスリランカの攻撃の実行者はISの戦闘員だ」とする声明を出しています。
実際に、実行犯と主張する男たちの写真も公開していますが、この同時多発テロは明らかにカトリック教会と外国人を標的にしたものであると考えられます。
そして最も重要なことは、このテロがクライストチャーチのイスラム教礼拝所(モスク)で起こした銃乱射事件への報復であった可能性が高いことです。スリランカ政府は、テロを実行したメンバーをすでに拘束しており、これは容疑者たちから得られた証言であると見られています。カトリック教会が標的にされたことを実際に見ると、これは事実であるものと思われます。
さて、このように私たちは、白人至上主義とイスラム原理主義が全面的に衝突する報復の連鎖の最中にいるのに気づくはずです。ニュージーランドで起きたモスクの銃撃事件は、この連鎖のきっかけになり、ノートルダム大聖堂の火災とスリランカの同時多発テロは、報復的な暴力の応酬を加速させるための役割を果たす可能性があるというわけです。
イスラム原理主義と白人至上主義とのテロの連鎖は、ニュージーランドの銃撃の報復がスリランカで実行されるというように、今後も国や地域を選ばずに実行される可能性があります。しかし、報復の連鎖が集中するのは、キリスト教文化の核心であると同時にイスラムの勢力が大きいヨーロッパ諸国であり、その中でも特にフランスが標的になるという予測がされています。
そのような状況の中、次にテロ事件が起こるのは白人至上主義者や同じ思想をもつ組織によるイスラムへの報復ということになります。当然、どこで起こるのかは分かりませんが、ノートルダム大聖堂の火災を象徴としたフランスであることは明らかです。
重要なのは、このような報復テロが発生しそうなタイミングです。5月23日からは5年に1度実施される欧州連合(EU)議会選挙があります。全部で706議席が改選される予定となっています。
今回の選挙では、極右政党の大躍進が予想されており、議席を増加させることになれば、欧州議会には法律の提案権はないものの、EUの政策の執行機関である欧州委員会を辞職させる権限を持つことになるわけです。
もし極右政党の議席が200を上回ることになれば、欧州議会は紛糾し、欧州委員会の政策実行にも支障が出てくる可能性があります。今後、極右のナショナリストによる内部からEUを解体するような動きへと発展することになるかもしれません。
もし、スリランカのカトリック教会や高級ホテルの同時多発テロに対する報復がヨーロッパで起こるのなら、イスラムの排除を主張する世論に火がつき、白人至上主義者を含むヨーロッパの極右政党を選挙で大躍進させることになります。
その結果、2019年秋頃から2020年年初にかけて、一層激しいナショナリズムとイスラム排外主義の流れが欧米諸国で生まれる可能性があるため、これから外国人労働者が殺到する日本でも注意しなければならなくなるということです。
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