サウジアラビアのタンカーやパイプライン攻撃やアメリカ大使館にロケット弾が撃ち込まれたことなど、トランプ政権の自作自演を疑う専門家の声が後を絶たないわけですが、最悪の事態に対して各国政府の準備も進んでいるようです。
すでにアメリカは、イラクにあるアメリカ大使館から職員を引き上げていますが、ドイツやオランダもイラク内での軍事訓練を中止していると報道されています。スペインは、ペルシャ湾に向かっているアメリカ機動部隊に参加しているフリゲート艦を離脱させました。
その他の国もイラン民兵組織の攻撃を恐れるあまりに、イラクに大使館を持つ国の職員の全面的な引き上げを検討していると、欧米在住者向けのアラビア語のニュースでも報じられているほどです。
このような状況の中、軍事的な動きも慌ただしくなってきており、ヨーロッパ上空の軍用機の動きはこれまでは見たこともないほど活発になっていることを観測したという情報がSNSなどで示されているようです。
この活発な動きが一体何を意味しているのかは具体的には分からないものの、イランへの攻撃を想定し、NATO軍(大西洋条約機構)が大量に軍用機の移動を行っている可能性があります。
特に、イギリス政府は、イギリス国籍のイラン系住民に対し、帰国すると拘束される可能性があるのでイランには渡航しないようにと注意を促していることが報道されています。また、ホルムス海峡を通過するイギリス籍のタンカーの保護という理由で、イギリスは特殊部隊を派遣しているようです。
その具体的な任務としては、ペルシャ湾にあるイラン軍の攻撃部隊を牽制することだとしており、ホルムス海峡を閉鎖するために組織されたイギリス特殊部隊は、積極的に作戦を実施しようとしています。
当然、こうした動きにイランは強く反発しており、戦争をする気がないことやアメリカとは交渉はしないという方針には変更がないものの、アメリカを牽制する警告をしています。
実際に、イラン北西部に対するアメリカの攻撃には準備はできており、反撃する十分な能力がイランにはあるとイラン革命軍は公表しています。そして、万が一攻撃があれば、米軍の被害は甚大になるとも警告したと報じられています。
このように、トランプ政権が戦争の可能性さえ感じさせるほどイランに敵対している理由として、中東でのイランの勢力が拡大していることが挙げられます。その機会を与えたのはロシア軍のシリア内戦介入であることは明らかです。
ロシア軍がIS(イスラム国)を攻撃し、これによって弱体化していたアサド政権の存続が決まり、これの打倒を目標にしていた欧米連合の国際的な政治力が弱まったように思います。そして、アサド政権を後押しして戦っていたイランが支援するレバノンの軍事組織やイランの民兵組織力は拡大していきました。
実際に、2007年頃に終結したイラク戦争後のイラクでは、イランが後押しするシーア派政権が樹立され、イランの勢力圏に入ることになり、またレバノンにはシーア派武装勢力のヒズボラが勢力を延ばしています。
これらの結果、シリアやレバノン、そしてイラクがイランの勢力圏に入ることになり、これはイランが、中東での「地域覇権国」となった可能性があるということです。
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