米失業保険申請 7週間で3300万件超
(出典:2020年5月8日 日テレNews24)
アメリカは、失業率が10%を超えることが確実視される状況であっても、ウイルスの感染拡大は必ず一時的に収束すると思われます。
そして、寸断されていたグローバルなサプライチェーンは再開され、世界各国の様々な産業分野の生産能力も次第に回復していくものと思われます。夏以降は、経済活動の再開に伴い一時の明るい雰囲気になるかもしれません。
しかし、感染拡大による3ヵ月の経済活動の停止は痛手は大きく、生産が再開されたとしても製品やサービスの需要は少ないと思います。どの国でも国内の失業率は上昇しており、政府による所得補助や事業支援があっても国内消費が元に戻るにはかなりの時間がかかります。
このため、今後も消費の記録的な低迷は続き、結果的に過度な生産能力を抱えた「過剰生産状態」が常態化(ニューノーマル化)になるものと考えられます。どの国でも消費の減少によるデフレ状態が長期間続くことになりそうです。
当然、慢性化する可能性のある「過剰生産状態」を少しでも解消できる各国の国際協調体制は上手くいかないのは明らかです。なぜかと言えば、各国は自国だけでも立て直すのに余裕がないからです。
コロナ禍に考える 無極の時代を生きる
(出典:2020年5月2日 東京新聞)
2017年から、「アメリカ・ファースト」で自国の利益のみを最優先する一国主義のトランプ大統領は、国内経済の再建に集中し、ますます孤立主義を深めることになります。他国の利益を度外視し、国内経済の再構築に邁進するというわけです。
この国内経済の再建のカギとなるのが、回復した生産能力で過剰に生産された製品・サービスをどの国の市場に売りにいくかです。まずは、その市場を探すことから始まります。トランプ政権は、アメリカ製品を買うことを日本やEU(欧州連合)に強く迫ると思われます。
一方、同じ過剰生産状態にある日本やEUは、アメリカからの輸出品を受け入れる余裕などないため、トランプ政権は安全保障条約の撤廃などこれまでには考えられなかったような圧力を同盟国にかけてきます。
そして、自国の国内市場を海外製品から守るためにさらに高関税を導入していくのは明らかです。各国は、自由貿易の秩序を守ろうとはしながらも、過剰の生産された製品を消費できる市場を求めざるを得ない状況に追い込まれることになり、日本やEUもこのことに悩まされます。
さらに、トランプ政権は国内市場を輸入製品から守るために、保護主義的な高関税の適用も行うはずです。その結果、これまで成長と繁栄を支えていた自由貿易体制は崩壊し始め、1930年代のような自国のみも優先させた保護主義的な体制に移行する可能性があります。
2017年から、アメリカが主導して始まった保護主義の体制は、ウイルス感染からの回復をどこよりも早く実現していきます。それに対して、すでに生産能力を回復しつつある中国は、製品価格を大幅に下げて外国市場に輸出攻勢をかける可能性が出てきます。
中国は、「一帯一路」経済圏の国々や東南アジア諸国など、経済的に近い関係にある諸外国に対して、中国製品の輸入促進と引き換えに復興支援やインフラ建設などを提供していくものと思われます。
そこで、中国製品を消費してもらう市場を確保するとともに、「一帯一路」経済圏を一層拡大させることになるというわけです。今、一党独裁の中国共産党は、国民の政治的な自由を制限していますが、確実な経済成長を確保して国民を満足させることが至上命令となっています。
また、中国は不動産バブルで膨れ上がった不良債権など、国内経済に爆弾を抱えており、民間企業や銀行の破綻を回避するために、経済の回復を急ぐ必要があります。そして、アメリカの利害と真っ向から衝突することになるということです。
どうやらアメリカは「中国を本気で許さない」つもりだ
(出典:2020年5月8日 現代ビジネス)
アメリカは、中国を完全に排除することを目的にあらゆる場面で政治的・軍事的に追い詰める政策を採用するものと考えられます。具体的には、南シナ海からの中国軍の撤退要求や中国人へのビザ発給停止、そしてアメリカ国内からの中国企業の排除などです。
さらに、膨大な死者を出したアメリカ国内の新型コロナウイルス蔓延の責任追求は、イギリスやフランスなどと一致団結して責め立てるようになるはずです。当然、中国は強く反応することになりますが、トランプ政権とは対話の余地がないことからアメリカ製品の排除や軍事的な行動を取るしかなくなります。
他方、日本を含む世界各国は、アメリカと中国、どちらの側につくかという選択が迫られることになります。すでに経済が地盤沈下した各国は、積極的に復興支援を提示する中国との関係を強化せざるを得ないように思います。
安倍首相とトランプ大統領、新型コロナ対策で連携を確認
(出典:2020年5月8日 Sankei Biz)
要するに、中国の経済圏はさらに拡大する可能性があるということです。ただし、日本はアメリカ従属が「国益」であることから、どこまでもアメリカについていくしか道がないのが現状です。やがて、米中の緊張常態が高まった時、基地内のウイルス蔓延で十分な展開能力を発揮できない米軍の状況を狙って、中国は軍事的な行動に出る可能性があります。
これこそ、2022年までの未来シナリオであるわけですが、イメージとしては第二次世界大戦前に各国の利害が対立し、国際協調の秩序が崩壊した1930年代のような状況です。もはや、外国に逃げることはできなくなりました。
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