Christianity Today, Top Evangelical Publication, Argues Trump Should Be 'Removed From Office'
(出典:2019年12月20日 TIME)
前回の続きですが、堕胎禁止とイスラエルの全面的支持という2つの政策を強力に推進するトランプ大統領ですが、これまで女性スャンダルなど支持基盤の「キリスト教会福音派」の倫理観に違反した問題を引き起こしても黙認されてきたわけです。
何があっても、福音派の人々の支持が揺らぐことはなく、2020年11月実施予定のアメリカ大統領選挙でも福音派のトランプ大統領支持は揺らがないと見られています。
しかし、そのような状況の中で掲載されたのが、「クリスチャニティー・トゥディ」の社説です。この新聞社は、アメリカ人なら誰でも知っている福音派を代表する「故ビリー・グラハム牧師」が設立したメディアです。
そして、現在の編集長は、12月19日の新聞に「ドナルド・トランプは、大統領として排除されるべき」というセンセーショナルな社説を掲載したわけです。この社説は、アメリカ国内で女性スキャンダルやウクライナ問題、そして数え切れないほどの失言などが福音派の倫理から外れていると避難しています。
そして、「福音派」の人々の間でも「政治的な理由で政治家を選ぶべきではなく、聖書に書かれている神の教えにしたがって選ぶべき」として、基本的な倫理観を欠如しているトランプは大統領職から排除されるべきだと報じられていました。
米キリスト教保守派がトランプ氏罷免求め トランプ氏支持基盤に異変
(出典:2019年12月25日 BBC)
これは、トランプ大統領の最大支持層である「福音派」からの初めての批判であるということです。トランプを強く非難したこの社説に対する反響は大きく、まず「ビリー・グラハム牧師」から引き継ぎ、「福音派」を率いている息子の「フランクリン・グラハム牧師」は、この社説を強く非難し、トランプ大統領への支持を改めて強調しています。
同時に、「福音派」を代表する牧師たち数百人が、社説の内容を非難してトランプ大統領を支持する声明を改めて行っています。
一方、社説を掲載した「クリスチャニティー・トゥディ」は、購読者数が以前よりも増え始めており、トランプを不道徳な大統領として批判する声は、内部にも一定程度存在していることがわかります。トランプ大統領への支持の是非を問う論争は徐々に高まってくと思われます。
そして、懸念されることは2020年1月に実施される予定のアメリカ上院議会によるトランプ大統領の弾劾裁判の行方についてです。実は、上院議会には6名の福音派キリスト教徒の上院議員がいます。
当然、全員が共和党であるわけですが、もしこの6人の上院議員が全員トランプ大統領の弾劾に賛成した場合であっても、現在の議席数ではトランプ大統領が罷免されることはないということです。
大統領の罷免のためには議席数の3分の2にあたる70票が必要になりますが、もし福音派議員6名が離反したとしても、民主党と合わせて51票にしかならなく、これでは罷免は実質的に不可能であるというわけです。
このように、「福音派」内部の論争の影響は弾劾裁判に影響を与えることはないとしても、少なからずアメリカ大統領選挙への影響はあると思われます。
今後、議論がさらに大きくなり、「福音派」がトランプ大統領支持・不支持で分裂するようなことにでもなれば、最大の支持層を失うことになりかねません。このことは、トランプ陣営にとって不利な状況になり、再選が危ぶまれる可能性さえあるということです。
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