Christianity Today, Top Evangelical Publication, Argues Trump Should Be 'Removed From Office'
(出典:2019年12月20日 TIME)
前回の続きですが、なぜ今、このタイミングでトランプ大統領の最大の支持層である「キリスト教会福音派」を代表する新聞社「クリスチャニティー・トゥディ」はトランプ大統領の排除を要求する社説を報道したのでしょうか?
日本では全く報道されていませんが、実はアメリカの「福音派」と北朝鮮には深いつながりがあったとされています。その関係は、日本が朝鮮半島を併合する前の1900年代初頭から始まっています。
当時、朝鮮半島はアメリカのプロテスタント系教会の東アジア布教の拠点であったと言われています。特に、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)周辺が布教活動の中心となっており、多くの「福音派教会」が布教を行っていたということです。
その後、「福音派」を中心とするアメリカのプロテスタント系教会は、朝鮮半島を植民地化した日本に対する朝鮮人の独立闘争も支援していたとされています。1919年、朝鮮半島では日本からの独立を要求した「三・一運動」が起きました。
この抗議運動を、人道的な見解から支援していたのがプロテスタント系のアメリカ人牧師たちであったわけです。また、戦後に独立した韓国の初代大統領の李承晩(イ・スンマン)も、ソウルのキリスト教青年会で宣教活動を行っていたプロテスタント系キリスト教徒であったと言われています。
さらに、興味深いことに北朝鮮建国の父、金日成(キム・イルソン)の父親は、一時期にプロテスタント系教会の牧師をしていたなどという話があります。
こうした、福音派を中心としたプロテスタント系教会と北朝鮮には、歴史的に強い結び付きがあったとされ、意外にも1930年頃のピョンヤンは「東のエルサレム」とまで呼ばれた布教の中心地であったことがわかりました。
なぜかと言えば、アメリカ人なら誰もが知っている福音派を代表する「ビリー・グラハム牧師」の妻である「ルース・グラハム」は、なんと北朝鮮の小学校に通っていたからです。ルースの父親は、福音派の牧師(宣教師)であったようです。
米著名キリスト教指導者のビリー・グラハム師死去 99歳、金日成主席とも会談
(出典:2018年2月22日 産経ニュース)
その後、1945年に日本が敗戦したことで北朝鮮は独立し、ソビエト連邦の影響下で社会主義国家となりました。これに伴って、北朝鮮のアメリカ人牧師たちは国外退去処分となったものの、北朝鮮と福音派の関係は途切れていなかったというわけです。
それから30年後の1973年、「グラハム牧師」は韓国を訪問し、300万人を集めて礼拝をおこない、首都ソウルに「ヨイド福音教会」を設立しました。これがきっかけとなって、韓国では福音派のキリスト教徒が増えたということです。
それから20年後の1993年に、「グラハム牧師」は死期が迫る「金日成」の招待で北朝鮮を訪問して会談し、アメリカと北朝鮮が友好的な関係を構築する必要がある合意されました。
翌年の1994年、金日成が亡くなって息子の金正日(キム・ジョンイル)が継いだクリントン政権の時、北朝鮮の核兵器開発の実態が明らかとなり、アメリカは北朝鮮を軍事戦争で壊滅させる計画を立てたわけです。
この時、現在に至る「米朝開戦危機」が始まったことになりますが、カーター元アメリカ大統領が特使として訪朝し、戦争を回避する方向に動き出した結果、核兵器開発を凍結する代りに原子力の平和利用を促進する軽水炉を供与するとした「米朝枠組み合意」が成立しました。
実は、カーター元アメリカ大統領にアドバイスをし、北朝鮮との問題を交渉によって解決するように迫ったのが「グラハム牧師」であったとされています。「友好関係こそ北朝鮮との問題を解決する唯一の方法である」というのが「グラハム牧師」の一貫した立場であったように思われます。
「グラハム牧師」は1997年にも訪朝しており、今度は息子の金正日(キム・ジョンイル)と会談しています。実際に、首都ピョンヤンにはいつくかのキリスト教会が今でも残っています。
つまり、トランプ大統領のように脅しのために戦争を口にすることはあっても、北朝鮮との問題は戦争ではなく、あくまで交渉で解決するという方向に転換させた人物こそ「ビリー・グラハム牧師」であったということです。
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