今回のメインテーマは、4月15日夕方頃にフランス・パリのノートルダム大聖堂で発生した火災と、そのちょうど一週間後に起きたスリランカのカトリック教会と高級ホテルをターゲットにしたテロ事件の関連性についてです。
この2つの場所での事件には、今のところ直接的な因果関係や犯行の連動を示す証拠は全くありませんが、俯瞰して見てみるとこれらの事件の背後にはある状況が存在し、それが2つの事件と関連していることがわかります。いよいよ、これから始まる連鎖的なテロ事件のスタートになるかもしれません。
まずは事実関係の確認からですが、ノートルダム大聖堂で火災が発生し、消火が翌日の朝に鎮火が発表されましたが、修復作業中だった尖塔が焼けて崩落し、木材で骨格が作られていた屋根の3分の2が焼失したとされています。
マクロン大統領は、火災現場近くで大聖堂の再建を約束し、国際募金活動を実施する意志を表明したため、セーヌ川の対岸側へ多くの市民が集まり、フランス全土及びイギリス、イタリア、ポーランドにある教会や大聖堂は鐘を鳴らし、世界各地で連帯が示されました。
大聖堂の火災によってフランス国民が連帯することでナショナリズムが高まり、マクロン政権の基盤を脅かしていた大規模な反政府抗議運動、「黄色いベスト運動」などは勢いを弱め、マクロン政権の求心力は高まると当初は見られていました。
しかし、5日後にはパリ市内でマクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」の23週目の激しい抗議運動が起こりました。その背景には、ノートルダム大聖堂の火災後、多額の寄付金が寄せられたことがあります。
寄付金の全てが大聖堂の復旧工事費に充てられ、貧しいフランス人には何も与えられないとの不満が抗議運動を激しくさせたわけです。未だに騒ぎが収まらないノートルダム大聖堂の火災ですが、その原因は事故とされ、テロの可能性は全面的に否定されています。
出火当時、大聖堂は大規模な修復工事を実施しており、電気系統からの出火が原因になった可能性が高いされています。しかし、この当局からの説明には同意しない意見も多く、イスラム過激主義者が引き起した計画的なテロの可能性を指摘する声もあります。
大聖堂の火災がテロであった可能性を示す証拠は今のところ何もなく、むしろ政府と警察は、そのような見方が報道されることに神経質になっており、フランスのみならず欧米のマスメディアもそのような可能性を一切否定しています。
実際に、出火原因は事故であるとの報道で完全に統一されていますが、これがイスラム過激派テロであるとした場合、ヘイトクライムや報復テロの発生が懸念されます。これを恐れた当局とマスメディアが、そのような報道を自粛しているものと考えられます。
それでも、これは事故ではなく、テロであった可能性を指摘する声は多く、その理由として2015年頃からカトリック教会の焼き打ちや十字架やキリスト像を破壊するなどの激しい暴力がドイツやフランスなどヨーロッパの主要国を席巻していたという話があります。
こうした事件は時にフランスに集中しており、特に2019年の発生件数を月別に2018年と比較すると、25%以上も増加しており、2月だけでも50件以上のカトリック教会を標的にした破壊行為があったとされています。
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