ノートルダム大聖堂の火災が起きる前、カトリック教会への暴力と破壊がどのようなものなのか、具体的に調べてみました。
フランス南部のニームやラヴァール、北西部ウイユにある教会が襲撃され、いずれも十字架と聖像が粉々に破壊されているようです。2月は約50件の教会破壊事件が起きており、毎日何らかの破壊行為が行われていることを示しています。
そして3月には、パリで2番目の大きさを持つサン・シュルピス教会が火事になり、歴史的に貴重なステンドグラスが粉々になったようです。こうした事件はドイツなどでも起こっていますが、フランスに集中しています。
2015年から2019年までに起こったフランスのカトリック教会の破壊と襲撃
そして、奇妙なのはこうしたカトリック教会を標的にした事件の当局の対応です。暴徒の襲撃では犯人は捕らえられたにもかかわらず、未だ捜査中として何も発表されていません。また火事の時も早々に事故とされ、放火の可能性は最初から否定されています。
特に、フランスの歴史のあるカトリック教会は修復の必要があるようですが、マクロン政権による緊縮財政のために建造物の修復予算は削減されており、建造物が崩壊の危険のある状態に放置されているというのが現状です。
フランス当局は、こうした状況が建造物の火事や崩落の原因にあると見て、原因をすべて事故と決めつけているようにも見えます。中には事故のケースもあるとは思いますが、放火やテロの可能性は全くないものとして一切報道されないところが人々に注目されているわけです。
その理由として、これらの事件が難民として国外から入ってきたイスラム系の過激主義者によって引き起こされたことがはっきりすれば、それは白人至上主義者や極右などの報復を生み、ただでさえ黄色いベスト運動で混乱しているフランスを、暴力の渦に引っ張り込みかねないとして警戒しているからです。
こうした状況を見ると、「ノートルダム大聖堂」の火災は決して別の出来事ではないことがわかるはずで、これまで起きたカトリック教会への襲撃や破壊が相次ぐ一連の流れの中で起こっているものと考えられます。
このように、ノートルダム大聖堂の火災も含め、カトリック教会への襲撃と破壊の原因が事故であると考えるには、さすがに無理があるようにも見えます。明らかに意図をもつ集団による攻撃であると見た方が理屈に合うということです。ではどのような集団が攻撃しているのでしょうか?
今年に入り、ローマ・カトリック教会は、長い間隠されてきた神父たちによる児童性愛の問題で騒然となっており、高位の聖職者が告発されたものの、ローマ法王のフランシスコ1世からは謝罪や説明がなかったとして辞任を要求する声まで出てきつつあります。
すでにローマ・カトリック教会は、憎しみの対象になりつつあり、宗教を否定する過激なフェミニストや過激派集団が教会の破壊を実行している可能性があります。しかし、犯人として逮捕されたとしても支持者が少ないことから、社会を分断する報復テロのようなことにはならないはずです。
一方、もしこれらの一連の事件の背後にいるのが、イスラム系難民に混じってヨーロッパに入国したイスラム過激主義者である場合、ヨーロッパの伝統文化の中核にあるカトリック教会を冒涜し、破壊することは当然の流れであるものと考えられます。
このままでは最終的に、白人至上主義者だけではなく、フランス社会全体で反イスラムの機運が高まり、暴力的な報復の連鎖は止まらなくなっていくのは誰の目にも明らかです。社会が完全に分断されるため、これには当局も神経質にならざるを得ないわけです。
これからこのような動きはどの方向に向かうのでしょうか?フランスやドイツ当局の抑制の効いた対応によって、過激な宗教間の暴力による報復の連鎖は回避されるのでしょうか?それとも、抑制の効かない展開になるのでしょうか?
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