日銀金融政策に不透明感、世界に影響波及も=IMFアジア太平洋局長
 (出典:2023年5月4日 Reuters)
日銀は、2008年に起きたリーマンショック(世界金融危機)から2年後の2010年からETFを購入し始め、安倍政権時に黒田総裁を招集した2013年に「異次元の金融緩和」が本格的にスタートしたわけです。
現在、約51兆円(東京証券取引所全体の時価総額約7%)を保有し、含み益を約12兆円も抱ええています。日銀は、その収益のほとんどを政府の歳入となる国庫納付金として支払ってることから、日経平均株価が下がるたびに損益が増えています。
日銀が保有するETFの損益が減るごとに、日銀は引き当てを行っていますが、その分の経常利益が減るので政府への国庫納付金額も少なくなり、その穴埋めは増税して国民が負担することになっています。
つまり、日銀のETF買入れによる株価下落リスクは日本国民ひとり一人が負担しているということです。4月から植田新体制となった日銀ですが、まずはマイナス金利政策をやめて金利を0.25%上げることから始めていきます。
〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨
 (出典:2023年5月4日 Reuters)
一方、アメリカFRBは政策金利の幅を減らしており、日米の金利差が縮まっていくので短期的には円高ドル安に向かっていくことが予想されています。また、もし日経平均株価が下がるたびに日銀はETF買いで下支えするので、さらに損益が増えていくのは避けられなくなるかもしれません。
日銀は、何とか含み益があるうちに売却する必要がありますが、岸田政権が増税のことしか考えていないことを考えると、日本国民の年金制度は守られないように思います。日銀の植田総裁は、近いうちに必ず政策金利を上げると思われます。
欧米のヘッジファンドは、「円高・ドル安」に向かうと考えており、6月のFOMCでFRBのパウエル議長が政策金利を下げることを決定すれば、現在1ドル=130円台が100円台にまで円高が進むことも考えられます。
つまり、これ以上の円安はないということです。問題は、急激な円高が始まる日時がまだはっきり予測できないことです。日銀もFRBも、債券や株式市場を暴落させないために発言に気を使っているのは明らかです。
2023年4月9日、日銀でも財務省出身者でもない東大経済学者の植田和男氏が日銀総裁に就任した後、翌日には岸田首相と面会しました。世界中の金融機関や投資家たちは、植田新総裁が日本の金融政策についての発言に注目していました。
しかし、黒田前総裁による「異次元の金融緩和」を継続することになったわけです。金融緩和を継続すると発表した後、市場が反応して一時1ドル=137円まで円安になりましたが、現在は134円台に戻っています。
要するに、金融緩和(国債発行=紙幣を印刷)を継続すれば円安になり、やめれば円高になるということです。日本以外の全ての国は、インフレ対策で金融引き締めをしていますが、日本だけ金融緩和を継続しているのでの日本円の価値は下がっています。
ところが、日本円よりもむしろ米ドルのほうが価値を下げています。それは中東や東南アジア、南米、そしてアフリカ諸国が米ドルを決済手段として使わなくなりつつあるからです。一方、日本円を使っているのは基本的に日本国内に住んでいる約1億人しかいません。
植田総裁「粘り強く緩和を続ける姿勢は不変」/日銀植田総裁会見(2023年4月28日)【ノーカット】
 (出典:2023年4月28日 Youtube@テレ東BIZ)
まとめると、「もう少し基調的なインフレ率が2%に届いたと言えるまでには時間がかかりそうであり、現行の金融緩和を継続するというは基本…」、「その時々に必要な政策変更は、1年半の間であっても毎回の政策決定会合で議論して必要があれば実行するというスタンス…」と、いうことです。
さらに、「1年半の間であっても…」、「もう少し辛抱して粘り強く金融緩和を続けたいというのが正直な気持ちだ…」と発言しているように、状況が変わらない限りは2023年4月から10月までは金融緩和を続けると解釈できます。
田中貴金属工業:金価格推移
 (出典:2023年5月3日 田中貴金属工業)
だから、この発言を受けて為替市場は「ドル・高円安」となり、アメリカFRBは5月のFOMCで政策金利を0.25%上げても6月は利下げの可能性が出てきたので、ドル建ての金(ゴールド)が1オンス=2050ドルまで上がりました。
一方、円建て金価格も連日最高値を更新中ですが、これから注意しなければならないのは6月1日に迫ったアメリカ政府の債務上限問題です。アメリカでは、「利上げ」と「金融引き締め」が終わりに近づいており、今後は景気後退次第でいつ金融危機が起きても不思議ではありません。
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