中国政府は、ほぼIMF(世界通貨基金)と同じタイミングで2018年度の経済(GDP)成長率を発表しています。
2018年の第4四半期(10月から12月)のGDP成長率は6.4%で、4パーセントにとどまり、第3四半期から0.1%減速したと発表されています。2018年全体の成長率は6.6%で、天安門事件翌年の1990年以来、28年ぶりの低水準となっているわけです。
中国経済の減速については、各国マスメディアでも報道されているものの、目標成長率が6.5%であったことからもたいした減速ではないことではないというニュアンスがあります。アメリカとの貿易戦争による厳しい状況にもかかわらず、中国経済はそれなりに健闘しているようにも見えます。
ところが、様々な国際機関やシンクタンクが中国経済の数値を発表している中、どれも予想を越えた悪さが目立ち始めています。例えば、2018年12月時点の輸入は5%の増加を予想していましたが、対前年比で7.6%も減少しています。また、輸出量も3%の増加を期待していたものの、結局4.4%も減少していました。
その中で、最も減少したのが巨大IT企業ファーウェイを筆頭としたスマートフォンの輸出です。前年度比でなんと15.5%も減少し、自動車の販売台数も5.6%も減少しています。
また、中国では失業率も悪化しており、2018年は4.9%でしたが、世界経済が急激に落ち込んだ2008年から2009年のいわゆるリーマンショック(世界金融危機)時の.4.2%よりも失業率が高くなっています。当時、中国国内でも失業率の悪化による社会不安が懸念されていました。
中国の製造業では、依然として内陸部の農村から都市部に出稼ぎに来た農民の労働に依存した体質があります。もし出稼ぎ労働者の失業率が2009年頃の水準を越えて上昇することになれば、社会不安の背景にもなるとも懸念されているのは明らかです。
このような中国経済の状況を見ると、政府発表の失業率が本当に6.4?%なのか6どうかの疑念が出てきつつあるようです。この10年ほど、政府が発表する統計データには以前から疑念がありましたが、それが再び再燃しているようです。
そのような状況の中、中国人民大学の経済学者が行った発表で、ある政府機関には中国の実質的な成長率の試算した内部報告書があり、それには2つの成長率が記載されていたという話が報道されています。そのうちの1つは、なんと成長率をたったの1.67%で、そしてもう1つの試算はマイナス成長であったということです。
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いつものように、日本のマスメディアでは報道されていませんが、中国著名のマクロ経済学者であり、人民大学国際通貨研究所副所長の向松祚(コウ ショウソ)教授のこの発表は世界を駆け巡っているようです。
2018年の中国の経済成長率がたったの1.67%というのはあり得ないようにも聞こえますが、それでも政府の公式発表である6.4%よりは明らか低いはずだとの見方が一般的になっているのは間違いありません。
もし中国の成長率が本当に1.67%であるならば、これは改革開放政策の実施で中国の資本主義がスタートした1978年以前の4年前、つまり1974年と同じレベルの経済成長率ということになります。
もしこれが事実なら中国は不況どころの騒ぎではなく、これまで40年ほどで中国の経済成長モデルとして支えてきた「国家資本主義」の妥当性が問われる事態にもなりかねないわけです。いずれにしても、中国はこれから世界経済には大きな影響を与えることになりそうです。
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