(社説)企業はROE向上で株主の期待に応えよ
(出典:2023年2月16日 日本経済新聞)
現在、日本でもほぼすべての上場企業は「ROE(株主資本)」に合わせた欧米型の経営方針を持っています。つまり、株主が投資した資金を有効に使ってできるだけ利益を増やすという方法です。
結局、利益を増やすためには従業員をリストラし、代わりにITや産業用ロボットを導入することが求められているわけです。企業経営者が創業者である場合、従業員を解雇しようとは考えていませんが、株主は経営者に圧力をかけながら投資額を増やしたり、減らしているのが現状です。
一方、経営者が雇われサラリーマン社長の場合、株主の要求に沿って従業員をリストラすることを躊躇しないケースが増えています。その結果、従業員は使い捨てにされ、株主だけが得をすることになります。
しかし、日本では諸外国と比べても、自分が所属している会社に貢献したいと思っている人は少なく、とにかく給与が貰えることを優先するようになりました。だから、少しでも嫌なことがあればすぐに転職しようとするので、株主にとっては都合がいい社会構造になりつつあります。
なぜこのような社会構造になったのかと言えば、日本にも欧米型の資本主義が20年遅れて導入されたからです。一昔前、このことを経験するには欧米諸国に長期滞在する必要がありましたが、もうその必要はなさそうです。
株高は失速へ、米利上げの影響は続く-JPモルガンのマテイカ氏
(出典:2023年2月21日 Bloomberg)
要するに、サラリーマンとして働くよりも、株式などに投資する投資家であるほうが豊かに暮らせるということです。ところが、金融市場がいつ崩壊して株価大暴落が起きるかわからなくなる中、これから投資を始める人は注意が必要です。
究極の資本主義国であるアメリカでは、ニューヨーク証券取引所を中心に誰でも知っている超有名グローバル企業が上場しています。時価総額ランキングの上位は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、テスラ、そしてアルファベット(グーグル)などIT・ハイテク企業ばかりです。
昨年、これらの巨大IT企業の株価は下落トレンド入りして、昨年は多くの投資家たちが損益を出しました。ところが、今年に入って株価が上昇し始めています。ちなみに、ビットコインなどの仮想通貨も同様に1月1日から上昇が始まりました。
ただし、価格が乱高下する株式や仮想通貨というのは賭博であり、最後に勝つのは天性のギャンブラーであることを知る必要があります。一生の仕事としてやっていくことはできないので、あくまでインフレ高騰から資産を守るための手段でしかありません。
インフレ高騰から自分の資産を守るのなら、本物の通貨(正貨)である現物の金地金(ゴールド)を保有していくのが妥当な考え方です。しかし、1グラム=8000円台を高値であると思い込んでいるうちは株式に投資するほうを選ぶはずです。
「都合よい時間に働きたい」非正規の3割超 総務省調査
(出典:2023年2月15日 日本経済新聞)
なぜこのような話をしなければらないのかですが、通貨の価値が減少(インフラ)するので賃金が上がっても生活がちっとも楽にならないからです。若い世代の間では、もう会社で働くことを諦めた人たちが大勢います。
その上、もし景気後退に突入すれば急激に仕事が減るのを目の当たりにすることになり、一気にリストラが増える可能性もあります。だからこそ、自分で起業したり、自分で利益を確保できるようにしておくことです。
景気後退がやってくると問題となるのが、精神的に落ち込むことです。例えば、うつ病になる人が増えたり、自信を失って自殺者が増えることがわかっています。また、食糧不足で飢えたり、極端な暑さや寒さで病気になることもあります。
なぜ昨年まで株価が下落傾向であったのかと言えば、FRBが政策金利を連続して上げ続けたからです。利上げは景気を後退させるので米ドルの価値が下がり、逆に金価格が上がったわけです。ウクライナ戦争が起きたから金価格が上がったのではなく、米ドルの信用が下がったからです。
いずれにしても、物価上昇が始まった日本では対応できない人たちが増えているように思います。
30年もデフレで暮らしていると楽に暮らしていけるのに慣れてしまい、先のことを考える能力が失われているのは明らかです。
日本から一度も出たことがない日本人にとって、世界で一体何が起きているのかを感じ取ることはできません。2020年にコロナ騒ぎが始まったことで世界は大きく変化しており、政治や経済、そしてテクノロジーなどの影響が日本にも及んでいます。
東京都区部の消費者物価4・3%上昇、41年8か月ぶり水準…都市ガス代は39%アップ
(出典:2023年1月27日 読売新聞)
例えば、約30年ぶりにインフレ高騰が起きたことは誰の目にも明らかです。日本全体の消費者物価指数は今月末に発表される予定ですが、一足先に発表される東京都の消費者物価指数は4.3%で止まる気配がありません。
今月2月も、食料・飲料品約5000もの商品が値上げされました。しかし、スーパーなど小売りは一部の商品を値引きしており、そこまでインフレが起きているとは感じません。北海道電力は、暖房を使用しなくなる6月から電気代を値上げすると公表しています。
2023年は始まったばかりですが、外国債券を世界一保有している「債権国」日本であっても、デフレを維持できなくなっています。このままでは、富裕層でさえ貯金が底をつく日が来るかもしれません。
現金を現物資産に替えておくことは自分や自分の家族、従業員たちを守ることになり、政府が公表する統計データのタイムラグや自称・経済評論家の嘘に騙されないように注意してください。
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